研究課題/領域番号 |
19K12530
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
福原 裕二 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (30382360)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国境漁業 / 北東アジア / 日韓漁業協定 / 領土問題 / 日本漁業 / 韓国漁業 / 日本海/東海 / 公共財 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本と朝鮮半島を跨ぐ海域の国境漁業を、「縄張り争い/国内の玉突き衝突/領土問題との交錯/国際政治」の側面から照射し、その実態解明を試みる。研究初年度である2019年度は、研究協力者との研究計画の確認・調整を目的に開催した「スタートアップ会合」により研究を開始し、年度を通じて、①資料収集、②研究手順に沿った現地調査の遂行、③研究会の実施、④研究成果の公表に努めた。 具体的な行動内容として、①では国境漁業に関わる未入手の図書等を購入し、先行研究のレビューを行うとともに、関連研究の到達点を確認した。②では、欝陵島及び朝鮮半島の30数カ所にのぼる主要漁港へ赴き、日本・朝鮮半島間の漁場紛争事例の収集、漁業関係者への対面調査による出漁論理・実状の把握、実見調査による魚種・漁法、操業ルール、出漁の制約と条件、政府・自治体の政策と対応などの調査を展開した。③では、領土・国境問題をボーダースタディーズの立場から考究する研究者(岩下明裕氏)を申請者主催の研究会へ招き、専門的知識の聴取を行った。④では日韓のいくつかの国際学会・シンポジウム等に参加し、研究交流を図るとともに、研究成果の一部を報告し公表した。 その結果、①では、国境漁業と領土問題との交錯した状況、国境漁業をめぐる国際政治的環境の把握の面で有益な知見を得た。②では、ここ数年の韓国・北朝鮮の沖合・越境水域出漁の状況や日韓漁業協定付属書1-2適用水域の現状調査に進展をみることができた。③では、国境漁業研究を国際関係・地域研究の一分野として定立しようとする試みに際して、貴重なコメントを得ることができた。④では、とくに漁業という実利(生活)・民間を特徴とする観点から領土問題を相対化していこうとする試み・知見の共有において一定の成果を挙げたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度にあたる2019年度は、スタートアップ会合の開催により研究に着手し始め、年度を通じて適宜、資料収集、現地調査、研究会の実施、研究集会の参加を通じた研究成果の公表を行っていくよう弾力的な計画を立案し、その展開を予定した。 年度当初には、スタートアップ会合を開催して研究が滑り出し、上述したように、必要な資料収集、現地調査を年度内に実施し終えた。また、申請者が主催する研究会も予定通りに開催・進行し、さらに日本・韓国で開かれた複数の学会、シンポジウム、講演会に参加し、研究成果を公表することができた。 以上のような進捗状況に鑑み、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の第二年目にあたる2020年度は、大まかには引き続き、①今年度の行動計画を確認・調整するための会合、②未入手や新公開の資料収集、③研究手順に沿った現地調査、④専門的知識の聴取を目的とした研究会、⑤研究交流を通じた研究成果の公表を計画している。このうち、①についてはすでに実施済みである。 しかし、②~⑤までの国内・国外移動を伴うすべての計画は、現今の「COVID-19」(新型コロナウィルス感染症)による行動制限(自粛)により、今のところ実施の目処が立たず、研究計画の大幅な変更を余儀なくされる可能性がある。そうした状況の中で、②~⑤のうち、チームズ(Teams)やズーム(Zoom)、メール、SNSなどWeb上での対応、また海外の研究協力者に依頼して実施可能な計画についてはこれらにより研究を遂行していく。だが、他に代替する方法がない計画は実施不能なので、研究期間の延長申請も想定し、研究計画を再編することも考慮に入れている。
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