研究課題/領域番号 |
19K12535
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
土屋 智子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50611000)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 戦争花嫁 / 日本人女性移民 |
研究実績の概要 |
2020年度は戦争花嫁移民の移住先に出向き、女性移民およびその子孫の方々にインタビュー調査を実施する予定であったが、コロナ禍で渡航がかなわず実現させることができなかった。そこで、すでにDVDに記録されているインタビュー調査のデータを文字起こしして、発話の内容を文字化した。本研究はすでに2004年にアメリカ本土のハワイで実施したインタビュー調査を発展させる目的があるが、今回はハワイで実施した女性たちのインタビュー記録を文字化し、「戦争花嫁」移民自身が語る移住について新たな形式で記録することができた。 また、渡航が叶わない状況の中、本研究の目的である、「戦争花嫁」移民の子供および孫世代がルーツのある日本をどのように理解してつながりを持っているのか、また、「戦争花嫁」移民およびその子孫が持つトランスナショナルな価値観や自己意識の特殊性を明らかにする、という目的を果たすため、2つの資料に着目した。一つは、2015年に公開されたドキュメンタリー映画「七転び八起き:アメリカへ渡った戦争花嫁物語」、もう一つは2019年8月に放映されたNHKBSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」である。「七転び八起き」の制作者の一人であるルーシー・クラフト監督には2016年に学術シンポジウムを開催した際、制作過程からその意図までお話を伺う機会を得ている。このドキュメンタリー映画を製作した3人の監督はみな日本から移住した戦争花嫁の娘たちであり、自分の母親のアメリカへの移住をどのように理解したのかについてがよく反映されている。さらに2019年8月に放映されたNHKBSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」はその年の秋にディレクターの方にお話を伺う機会を得ている。「戦争花嫁たちのアメリカ」でも女性移民の子供および孫世代の理解が扱われている。監督およびディレクターの話と共にこれらの作品分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、「戦争花嫁」移民の子供および孫世代がルーツのある日本をどのように理解しつながりを持っているのかについてと、国外に渡った「戦争花嫁」移民およびその子孫が持つトランスナショナルな価値観や自己意識の特殊性を彼女たちの子供および孫世代も含めてインタビュー調査を実施して明らかにすることが目的である。そのような観点からはコロナ化で渡航が叶わないので、研究は「遅れている」と言わざるを得ないが、「やや遅れている」とした理由は、2015年に公開されたドキュメンタリー映画「七転び八起き:アメリカへ渡った戦争花嫁物語」と、2019年8月に放映されたNHKBSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」において、どちらも制作した監督およびディレクターの話を伺い、本研究で明らかにしたいことを一部分ではあるが分析することができたことに由る。戦争花嫁移民およびその子孫が戦後に生じた結婚、移住をどのように理解しているのか、日米文化をどのように理解しているのか、そして国家や文化への帰属意識はどうかなど、本研究で明らかにしようとすることの一部を考察することができた。しかしながら、ドキュメンタリーは研究者本人が行ったインタビュー調査ではないので、今後コロナの状況が改善し、女性移民の移住先で実際にインタビュー調査が実施できるようになることを願うばかりである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の目的を達成するため、戦争花嫁移民の移住先へ出向き、その子供と孫世代を含めたインタビュー調査を実施する予定である。渡航が可能になるまでは、引き続き、近年「戦争花嫁」移民についてが主題となっている、2015年に公開されたドキュメンタリー映画「七転び八起き:アメリカへ渡った戦争花嫁物語」と、2019年8月に放映されたNHKBSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」を使用して、戦後に生じた結婚、移住という歴史に関する理解と、彼らの現在の国や文化への帰属意識およびアイデンティティに関して分析を行い、論文にまとめ発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は女性移民の移住先に出向いてインタビュー調査を実施する渡航および滞在費を計上したが、コロナ禍で実施することができず、それらの費用を使用することがなかったため次年度使用額が生じた。 2021年度後半には女性移民の移住先に出向いてインタビュー調査を実施できるのではないかと考えている。
|