本研究の目的は、1.日本からアメリカ本土およびハワイへ渡った「戦争花嫁」移民の子供および孫世代がルーツのある日本をどのように理解しつながりを持っているのか、について調査をすること、2.国外に渡った「戦争花嫁」移民およびその子孫が持つトランスナショナルな価値観や自己意識の特殊性や類似性を明らかにすることである。2019年 8月に放映されたNHKBSドキュメンタリー「戦争花嫁たちのアメリカ」を制作されたディレクターにお話を伺うところから調査を開始した。女性たちの語りは、これまで行ってきた研究結果と整合して、結婚、移住、子育ての価値観が表れていた。また、実際に「戦争花嫁」として移住した女性たちだけでなく、彼女たちの子供世代および孫世代への取材も含まれており、戦後アメリカ人兵士と結婚してアメリカへ移住した女性移民だけでなく、その子供および孫世代への影響を視野に入れている点で本研究に意義深いものであった。次に、2015年に公開されたドキュメンタリー映画「七転び八起き:アメリカへ渡った戦争花嫁物語」に着目した。「七転び八起き」の制作者の一人であるルーシー・クラフト監督には2016年に学術シンポジウムを開催した際、制作過程からその意図までお話を伺う機会を得ている。このドキュメンタリー映画を製作した3人の監督はみな日本から移住した戦争花嫁の娘たちであり、 自分の母親のアメリカ移住をどのように理解したのかについてよく反映されている。これら二つの資料から、日本人「戦争花嫁」移民本人だけではなく、子供や孫の視点にも焦点をあて、日本人「戦争花嫁」移民の結婚、 移住、アメリカ生活が次世代にどのように解釈されているのかについて検証をおこなった。このことをまとめた論文は「次世代が語る『戦争花嫁』移民」と題して日本女子大学文学部紀要71号に掲載されている。
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