研究課題/領域番号 |
19K12536
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
石井 正子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40353453)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィリピン / イスラム / 平和構築 / 自治政府 / 武力紛争 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、1)フィリピンの権力構造における新自治政府の展開はいかなるものか、2)MILFは、いかに武装集団から政治集団へ変容を遂げるか、3)MILF以外の武装集団が存在するなか、新自治政府はいかに治安を維持するのか、の3つの問いを立てているが、本年度はそれぞれについて、以下のことを達成することができた。 1)については、バンサモロ組織法成立当時の北コタバト州の知事(2020年現在副知事)にインタビューを行い、組織法成立に賛成した政治的意図を問うた。同時に、当時、非モロ先住民の権利を主張した下院議員(2020年現在北コタバト州知事)にインタビューを行い、メディアには現れない政治家としての葛藤があったことに理解を深めた。 2)については、武装解除の対象となった元MILF兵士2名に対し、インタビューを行った。除隊兵士に対する生計向上支援は予定通りには進んでいないが、現段階ではそれに対して不満が少ないことが確認できた。 3)については、ISに忠誠を誓う「マウテ・グループ」台頭の背景について、ミンダナオ国立大学イリガン校平和開発研究所の研究者と意見交換を行った。その成果を東南アジア学会第101回研究大会パネル「東南アジアにおける「イスラーム国」のインパクト」(於 静岡県立大学 2019年11月24日)で報告を行った。報国のタイトルは「『マウテ・グループ』台頭とマラウィ市街戦:フィリピン南部の和平プロセスからの一考察」である。また、3)については、近年、ドゥテルテ政権と良好な関係にあるMNLFミスアリ派のプレゼンスが表面化している傾向があることがフィールド調査から分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り、研究計画で立てた3つの問いについてはそれぞれ順調に進めている。調査協力者に謝金を支払い、定期的に現地から暫定自治政府の動きに関する情報を送ってもらっていることも役に立っている。一方、当初計画していた他の武力紛争後の地域における自治政府設立に関する文献調査については、あまり進めることができなかった。また、武装解除委員会に対するインタビューは、アポイントメントを取ろうとしたが、日程の都合がつかず、実施することができなかった。東南アジア学会での報告をもとに、国際学会で発表を行うべく、フィリピンの大学の研究者と意見交換も開始した。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、1)フィリピンの権力構造における新自治政府の展開はいかなるものか、2)MILFは、いかに武装集団から政治集団へ変容を遂げるか、3)MILF以外の武装集団が存在するなか、新自治政府はいかに治安を維持するのか、の3つの問いについて現地調査を中心に実施する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により、現地調査が実現できないことが見込まれる。それゆえに、問1を調査協力者による現地からの情報提供を中心に研究を進める予定である。他の武力紛争後の地域における自治政府設立に関する文献調査も進める。2020年9月に開催予定であったスペインで行われる国際学会INTERNATIONAL CONFERENCE ON PHILIPPINE STUDIESにおいてフィリピン南部でISに忠誠を誓うグループの動向分析に関する発表を申請し、承諾されたが、延期されることが決定された。それゆえに、これまで実施してきた現地調査のまとめ、国際学会での発表に向けた英文ペーパー執筆を行うことに注力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月1日から3月17日までの海外出張費として次年度に繰り越して使用したため。
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