研究課題/領域番号 |
19K12536
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
石井 正子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40353453)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィリピン / ミンダナオ / 平和構築 / 武力紛争 / 自治政府 |
研究実績の概要 |
武力紛争影響地域における自治政府の比較研究については、アイルランドに関する文献を購読し、理解につとめた。2021年度は、ミャンマーとアフガニスタンにおいて政変が起こったため、とくに同二地域に関するセミナーや研究会に参加し、武力紛争影響地域における脆弱なガバナンスについての理解を深めた。 関連する文献研究については、2020年にアメリカ植民地期のフィリピン南部政策に関する新しい文献が立て続けに出版された。特に以下の文献の内容を入念に読み込み、新しい知見を習得した。American Datu: John J. Pershing and Counterinsurgency Warfare in the Muslim Philippines, 1899-1913 (2020); Semi-Civilized: The Moro Village at the Louisiana Purchase Exposition (2020); Civilizational Imperatives: Americans, Moros, and the Colonial World (2020). バンサモロ暫定自治政府については、現地調査協力者から毎月情報提供を受け、その動向把握を行った。交付申請時には、2022年5月のフィリピン総選挙にあわせて新自治政府の代表を選び、翌6月に発足させる予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の蔓延などにより、選挙規定などの策定が間に合わず、2025年6月まで暫定期間を延期することとなった。しかし、この延期の可否をめぐって国会において激しい論争が闘われたため、論争の内容について情報収集を行った。 バンサモロ暫定自治政府の議員について、そのプロファイリングと、可決された法律や決議を提出議員別にまとめる作業に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、当初予定していたモロイスラム解放戦線(Moro Islamic Liberation Front: MILF)や南部エリート政治家に対する現地調査によるインタビューが実施できなかった。比較研究については、当初カタルーニャとの比較を予定していたが、ミャンマーとアフガニスタンでの政変を受け、同二地域に関する情報取集を優先した。
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今後の研究の推進方策 |
研究休暇を利用し、2022年6月と7月において本科研による現地調査を行う。とりわけ以下のテーマに注目する。 1)2022年5月の選挙結果のまとめと分析:新自治政府の代表を選ぶ選挙は2025年5月に延期されたが、MILFの政党である統一バンサモロ正義党(United Bangsamoro Justice Party: UBJP)は2022年5月のフィリピン総選挙においては、いくつかの自治体で候補者を立てている。これらの候補者の勝敗をまとめ、分析を行う。 2)暫定自治政府の治安維持部門に関する調査:武装解除においては、フィリピン政府は1兵士あたり100万ペソ相当の支援を公約していたが、その実施内容について、MILFとのあいだに意見の齟齬が生じている。今後の武装解除において、暫定自治政府とフィリピン政府がどのような交渉によりこの齟齬を解消するのか否かに注目する。また、MILFとモロ民族解放戦線(Moro National Liberation Front: MNLF)の兵士を国家警察に統合するプロセスについても動向を追う。 3)MILF以外の武装集団の動向:2017年5月~10月にかけてマラウィ市においてフィリピン治安部門とISに忠誠を誓う「マウテ・グループ/IS Lanao」とのあいだで激しい戦闘が闘われ、同市の一部が壊滅する事件が起こった。この事件から5年が経つが、未だに元の住民は帰還できておらず、不満が高まっている。「マウテ・グループ/IS Lanao」をはじめとするISに忠誠を誓う諸グループの動向を追う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、予定していた海外現地調査が実施できなかったため次年度使用が生じた。2022年6月および7月に海外調査を実施する計画である。
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