本研究はフィリピン南部の武力紛争と和平プロセスの最終局面に密着し、紛争が終結するために必要な条件などを明らかにすることに学術的な意義がある。武力紛争後に行われる民主的な選挙については、それが鎮静化していた対立を煽る契機を創り、平和構築を阻害する場合もある。そのために、2022年5月の総選挙に臨むにあたり、MILFとその政治政党は、既存の政治家との対立を回避するための慎重な交渉を行った。しかし、こうした行動は慎重なゆえに、公にされることは少ない。フィリピン南部の平和構築には、日本政府も支援をしている。この実態をインタビューやフィールドワークにもとづいて明らかにすることに社会的意義があると考える。
|