研究課題/領域番号 |
19K12540
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
加藤 敦典 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (60613750)
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研究分担者 |
宮沢 千尋 南山大学, 人文学部, 教授 (20319289)
比留間 洋一 静岡大学, 国際連携推進機構, 特任准教授 (30388219)
岩井 美佐紀 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (80316819)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ベトナム / 高齢者 / 施設介護 / 居住 / 家族介護 / 看護学 / 生活史 |
研究実績の概要 |
6月に1回目の研究会を開催し、研究課題の確認と今後の研究計画について意見交換をおこなった。とくに、ベトナムにおける施設介護の現状と課題、村落部における家族による高齢者や子どものケアをめぐる女性を中心とした親族ネットワークの役割などについての知見をシェアすることができた。 8月には研究代表者の調査地であるベトナム・ハティン(Ha Tinh)省をメンバー全員で訪問し、ベトナムの地方社会における高齢者ケアの実態についての問題意識をメンバー間で共有した。ハティン省労働局では現地の社会養護施設の概要についてレクチャーを受けた。ハティン省功労者養護院では介護の実践現場を視察するとともに、数名の入居者の生活史を聞き取ることができた。ハティン省タックチャウ(Thach Chau)村では高齢者の居住形態について四つの世帯から聞き取りを実施した。そのほか、ハノイ市では家族・ジェンダー研究所所長のTran Thi Minh Thi氏(研究協力者)に面会し今後の研究計画について打ち合わせをおこなった。 今年度の調査・研究を通して、ベトナムの高齢者ケアに関する課題をめぐり、地域研究の研究枠組みと介護・看護論の研究枠組みのあいだに懸隔があることが明確化した。両者の関係を考えるうえで、現地社会のケアの制度や実践を「あるべき」介護や看護との落差という観点からのみ理解すべきではないし、また「あるべき」介護や看護を導入するための「手がかり」としてのみ評価すべきでもない。どうすればよいかについての答えはまだ出ていないものの、本研究の取り組みとしては、高齢者を含む被扶養者とその家族をめぐるケアの実践例や生活史を具体的にたどることを通して介護や看護の先進地域における議論や取り組みをいったんカッコにくくることにより、地域研究と介護・看護研究を橋渡しする鍵概念を抽出していくことが重要であると考えるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8月の合同調査を通して、本研究課題についての認識をメンバー間で共有し主要なトピックスを抽出するという本年度の目標はほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、各メンバーが長期休暇などを利用してベトナムで個別調査を実施し、各地域における高齢者や要介護者のケアの実態について具体的な事例の収集と分析をおこなう。ただし、コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、実施時期および実施方法については再考する場合がある(アンケート調査など)。 最終年度には、京都で国際シンポジウムを開催し、ベトナム地域研究の視点、看護・介護研究の視点、ベトナム側の研究者・実践家の視点からの報告を通して、ベトナムの高齢者ケアに関する課題について、地域研究と介護・看護研究のあいだの問題認識の架橋をおこなうことをめざす。 そのため、2年目から、国内外の専門家や実務家との連携を開始する。具体的には、看護・介護研究の専門家、日本における高齢者福祉事業者(とくにベトナム系住民と係わりのある施設など)、ベトナムの高齢者ケアの政策立案者や研究者などにコンタクトをとる。ベトナムにおける扶養の権利と義務に関する法的規範についての専門的な理解も必要であることから、法学・法社会学の専門家とも連携を構築する。 また、上記の架橋をおこなうための理論的枠組みの構築をすすめる。小農社会論からみたアジアの老親扶養の比較研究、労働力の国際移動とケアの倫理、ケアと看取りの「場」についての議論、社会的な「つながり」と「切断・距離」についての理論的考察など、ベトナム地域研究と介護・看護学の枠組みを超えたより抽象度の高い議論についてのサーベイに重点をおいて研究をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の岩井美佐紀の研究活動において「その他」(文献複写費等)の支出が当初の予定より少なかったため。次年度に岩井が実施する現地調査でのカウンターパートへの研究協力謝金に充当する予定。
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