研究課題/領域番号 |
19K12540
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
加藤 敦典 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (60613750)
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研究分担者 |
宮沢 千尋 南山大学, 人文学部, 教授 (20319289)
比留間 洋一 静岡大学, 国際連携推進機構, 特任准教授 (30388219)
岩井 美佐紀 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (80316819)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニティ / ジェンダー / 高齢者 / 介護留学生 / 高齢者法 / 東アジア / アタッチメント / ディタッチメント |
研究実績の概要 |
(1)ベトナムの村落部におけるコミュニティ・ケアの実践に関して、夫方居住慣行のもとでの女性のライフコースと居住地の移動などの観点を踏まえ、ジェンダーの視点からみたコミュニティの複相性に注目しつつ、ケア・アクターとしてのコミュニティのありかたを理解すべきことがあきらかになった。(2)東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)によるベトナムの高齢者ケアについての大規模調査を、調査メンバーの日本大学・斎藤安彦教授や他の科研チームのメンバー(精神医療、看護学等)と詳細に検討した。その結果、とくにサンプルの適正性やベトナムの家族のありかたに照らしたケア・アクターの分析などについては地域研究の知見を活かしたより詳細に調査設計が可能であることが明らかになった。(3)今後のベトナムの高齢者ケアの一翼を担う在日ベトナム人介護留学生の教育支援について、漢越語を活用することの有効性など、実践的な知見を得ることができた。(4)ベトナムの高齢者ケア・レジームを理解するうえで、法学的な研究が大きく欠けていることが課題として明らかになった。神戸大学・金子由芳教授を講師として招き、ベトナム高齢者法の成立過程について国際的な法整備支援の脈絡における社会主義法と自由主義法のせめぎあいの視点から分析することの重要性を確認した。(5)そのほか、日本文化人類学会植松東アジア研究基金研究促進事業採択課題「東アジアの高齢者の住まいと居場所―アタッチメントとディタッチメントの両面に注目して」(代表者:加藤敦典)のメンバーと合同研究会を開催し、ベトナムの事例をより広い東アジアの脈絡において分析するなかで、家族制度や祭祀慣行の変化と女性のケア役割の動態などの面で同時代的に共通する部分が多くみられることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、予定していたベトナム現地調査が実施できず、そのため、最終年度(2021年度)に計画していた成果報告のためのワークショップも実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては、新型コロナウイルス感染症がベトナムにおいても徐々に収束に向かいつつある。大学の夏休み期間にベトナムで現地調査を実施する予定で研究を推進する。ただし、当初の計画通りの期間と内容で調査を完全に実施できる保証はない(たとえば、村落部での調査には医療体制の面でも、現地の受け入れ態勢の面でも不安が大きい)。そのため、今年度中に予定している成果報告のためのワークショップは、今後の後継研究プロジェクトのためのキック・オフ・ミーティングと位置づけ、ここまでに明らかになった研究課題を明らかにするとともに、この三年間におこなってきた他の科研プロジェクト等との連携を確認する場としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、2021年度と新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、ベトナムでの現地調査が実施できず、また、対面で予定していた研究会も実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じている。今年度は、大学の夏休み期間に代表者・分担者がそれぞれベトナムで現地調査をおこなう。また、研究協力者のグエン・ティ・ビック・チャン氏(日本の介護施設で勤務中)にもベトナムでの現地調査に参加いただくにあたり、その旅費を支出する。そのほか、中国の高齢者法について余乾生氏(横浜国立大学)に講義いただくなどする予定である。11月もしくは12月に京都市内にて成果報告のワークショップを2泊2日で開催する。そのためのメンバーの旅費、ゲスト・スピーカーの旅費・謝金、会場費、アルバイト謝金を支出する予定である。
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