研究課題/領域番号 |
19K12541
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
鈴木 絢女 同志社大学, 法学部, 教授 (60610227)
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研究期間 (年度) |
2021-01-01 – 2025-03-31
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キーワード | マレーシア / フィリピン / 財政 |
研究実績の概要 |
本課題では、フィリピンとマレーシアにおける国家財政が、行政府の長と立法府の議員の間での取引資源になっているために、財政規律がゆるむ傾向にあるという観点から両国の財政を研究している。 今年度は、フィリピンにおいて議員の個別利益にもとづく要求のために、予算の付け替えーー省庁に割り当てられていた予算の別項目への変更ーーが常態化していることと、また、こうした交渉がとりわけドゥテルテ政権化で拡大し、財政規模が急増していることが確認できた。さらに、このような予算付け替えの結果得られた予算が、予定されていた年度内に支出されていないことも明らかになった。これは、主に所管官庁の能力不足に由来する。具体的には、議会・行政府での交渉の結果として箇所づけされた予算について、所管官庁や地方政府による見積もりや業者の選定などが間に合わず、予算交付が予定年度を超えたり、年限を超えたりすることがあることが、聞き取りにより明らかになった。 昨年まとめた新型コロナウィルスに由来するパンデミック時の財政支出パターンでは、フィリピンの国家の能力が限定的であることが明らかになったが、あらためて国家の能力の限定性という点が、確認された。 以上の事実を、予算書の数値データの整理にどのように反映させていくかが、2023年度中に取り組んだ大きな課題の一つである。現在、整合性のある通時データとしてデータベースを作成している。また、本課題では、歴史的連続性を重視した枠組みを前提としていたが、ドゥテルテ政権時の予算額の急増をうまく解釈する枠組み作りにも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍で海外渡航ができなかったことから、他の課題(国際共同研究強化基金(A))での海外渡航を今年度に行わなければならなかった。そのため、本課題での調査は見送らざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2000年代以降の財政データが概ね揃ったため、2カ国比較の論文を仕上げて、国際ジャーナルに投稿する。 また、冬頃にアーカイバルリサーチのための渡航(シンガポール、ワシントンDC)を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、先行課題であった国際共同研究強化基金(A)を優先せざるを得なかった。2024年度は、海外アーカイブでの資料収集もしくは、RAを雇用しての現地資料収集を進める。
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