研究課題/領域番号 |
19K12543
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
舟橋 健太 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (90510488)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 「不可触民」 / インド / 聖人 / 社会運動 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、「不可触民」たちが社会運動に導かれる主たる誘因として、またかれらの凝集の軸として、「聖人信仰」を捉え、調査研究を推進していくものである。すなわち、聖人信仰の実践の様相に焦点を当てた現地調査から、被差別民における「アイデンティティの複数性と共有」から拡がる他者関係の展開可能性を、いかに捉え、考えることができるか、分析・考察を行っていくものとなる。 2021年度においても、昨年度に引き続き、新型コロナウィルスの世界規模での感染拡大の影響を受けて、当初計画していたインド現地調査等について、すべて実施することができなかった。代替的に、これまでの研究蓄積の整理と取りまとめ、刊行・発信に努めた。 具体的・代表的には、ひとつに、参画している国際日本文化研究センターの共同研究会の成果刊行物である、上村静他編著『差別の構造と国民国家――宗教と公共性』(法藏館、2021年)への寄稿を挙げることができる。研究代表者は、本研究課題の成果も盛り込みつつ、「被差別/非差別の主張とカースト制度―「不可触民」であること、インド人であること―」(107-140頁)を執筆した。また、オンラインで開催された次の国際会議における研究報告を、主要な業績として挙げることができる。すなわち、インドの非ヒンドゥー教における「カースト」の様相に関する比較研究を趣旨とした、インド社会学会の分科会の一つである、“Caste among Non-Hindus”での研究報告である。ここでは“As a Chamar and/or a Buddhist: ‘Caste’ among ‘Converted-Buddhists’ in Uttar Pradesh”と題した報告を行い、質疑応答を含めて見解の交換を行った。 以上、海外出張や現地調査が行えない状況のもと、可能なかたちでの研究の進展を図ったものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、世界規模での新型コロナウィルス感染拡大の影響から、海外現地調査を一切行うことができず、当初の研究計画を十全に推進することができなかった。一方、これまでの研究蓄積を基にした論考の執筆・刊行、研究報告等の研究発信に努め、2021年度は多くの業績をあげることができた。しかし、やはり現地調査を実施できない影響の大きさは否めず、研究課題の進捗については「やや遅れている」ものと判じざるを得ないところである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題であるが、研究推進の主軸として現地調査を置いていることから、やはり新型コロナウィルスを理由とする現地調査実施の可否が、今後の研究展開に大きく影響してくるものとなる。インドにおける渡航者受け入れ、ならびに日本における新型コロナウィルスを理由とする渡航制限について、2022年度は緩和の兆しがみられるものと考えている。内外の情勢からインド出張が可能となった場合には、夏期(7月~9月)、冬期(12月~1月)、春期(2月~3月)のいずれかにおいて、2回程度の現地調査を行うものである。 一方、2022年度においても、先の理由から現地調査を行い得ない場合には、ひとつには、引き続き、文献渉猟と研究の蓄積に基づく論点の整理に専心し、これまでの調査データの分析・考察、ならびに成果の刊行・発信に努めるものである。またもうひとつには、オンラインでの国際会議への参加や海外研究者との討議を試みることにより、見解の交換・考察の深化を図り、研究課題追究の一助とすべく考えている。さらに、在日のインド人コミュニティとの関係構築ができたことから、日本国内での聴き取り調査等の推進を計画している。 合わせて、今般の新型コロナウィルスが及ぼす社会への影響について、特に社会経済的により大きな不利益を被りやすい「不可触民」たちに焦点を当てて、情報の収集・分析と、考察の展開を行うものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、2021年度と、新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、研究計画の主軸である海外現地調査を行うことができず、旅費として予定・計上していた分がほぼ手つかずの状況となっている。2022年度は、感染状況ならびに制限の緩和から、海外現地調査が一定可能になることを予想しており、旅費としての経費支出も可能になるものと考えている。また、在日のインド人コミュニティに関する調査研究も計画していることから、国内出張旅費としての使用も予定しているものとなる。
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