研究課題/領域番号 |
19K12544
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
田村 史子 筑紫女学園大学, 文学部, 研究員 (70320380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東南アジアのゴング / 楽器の形と音の関係 / 熱間鍛造 / 楽器の製造と流通 / 武器鍛造と楽器鍛造 |
研究実績の概要 |
本研究は銅合金製の楽器『ゴング』の製造法とその流通について、東南アジア全域の俯瞰図を描くことを目的としている。2020年度は『ゴング』製造のセンター間の交流と製造法の関係性、及び流通のシステムを明らかにするための現地調査を計画していたが、コロナ禍のせいで実施できなかった。その代わりに、以下の3つの方法で研究を進めた。 1.前年度までに行った現地調査の映像記録、写真、などを細かく分析し、楽器製造の工程の全プロセスの解明に努めた。その中で、インドネシアの「熱間鍛造」による『ゴング』の製造法については、筑紫女学園大学「人間文化研究所モノグラフシリーズ」第5号として2019年度に出版したが、さらに、現地の音楽家、工人、と共同し、厳密な現地用語の確定を行っており、この分野での基本資料となるものであろう。 2.「音響学」「金属工学」「形状分析」「海洋考古学」などを専門とする研究協力者と研究会を行い、様々な視点から銅合金製の『ゴング』の分析を行った。形状の特徴(フラットであるかこぶ状突起を持つか)による音響の違い、鍛造と鋳造における合金の金属組織の比較、流通を確定するために、異なった来歴の楽器の形状分析、などがテーマとなっている。その報告は、2021年度の筑紫女学園大学「人間文化研究所年報」に掲載予定である。 3.形と音の関係性を解析するために、筑紫女学園大学の所蔵する青銅の楽器のオーケストラ「ガムラン」の音高測定を行い、調律の方法を記録した。この結果は、2021年度の筑紫女学園大学「人間文化研究所年報」に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、東南アジアにおける『ゴング』製造のセンター間の交流とその製造法の関係性、流通のシステムなどを明らかにするために、各国での現地調査を計画していたが、コロナ禍や政変のせいで実施できなかった。 現地調査を予定していた地域及び調査内容は、1.「インドネシア、ミャンマー、ヴェトナム」において、(a.原料の産地と調達方法、b.製造センター間の関係と交流の実態と歴史的背景、c.『ゴング』の流通の実態の調査)、2.「ラオス、カンボジア、フィリピン」において、(a.『ゴング』製造所の位置の確認、b.『ゴング』流通の実態の調査)であった。日本で実行可能な研究は継続して行っているが、特に、現地調査を先行実施していないラオスとフィリピンに関しては情報が不足している。この地域の現地調査は、東南アジア全域の実態を知るためには、欠かすことが出来ないものである。
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今後の研究の推進方策 |
研究内容の諸項目に対応して、日本国内外の研究協力者たちとの連携を強化し、本研究の精度を高める。また、文献資料の類を更に探索し、必要な翻訳作業を行って、歴史的背景の解明を進める。また、インターナショナルな成果発表の可能性を追求する。さらに、今回のコロナ禍とミャンマーなどの政変によって、東南アジア各国の銅合金製楽器『ゴング』の製造活動とその流通にどのような影響が起きているかを調査し、各地の工人たちとのネットワークを構築する試みを行う。それは、今後の様々な文化的共同作業のために備えることになろう。また、2020年度に実行できなかったラオス、フィリピン、ミャンマー、ヴェトナム、カンボデジアなどにおける現地調査を、今年度中には実行できるよう、方策を検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた、東南アジア各国への現地調査が、コロナ禍と政変などのせいで実施できなかったため。
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