研究課題/領域番号 |
19K12547
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研究機関 | 大阪観光大学 |
研究代表者 |
小野 健吉 大阪観光大学, 観光学部, 教授 (40194584)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 庭園観光 / ガーデンツーリズム / 庭園間交流促進計画登録制度 / 奈良県 / 愛媛県 / 西芳寺 / 粉河寺 / 西国三十三所 |
研究実績の概要 |
平成4年度は、新型コロナウィルス感染症による行動制限が緩和に向かう中、現地調査も一定程度実施し、これまでの蓄積も用いながら、庭園観光に関する以下の論考を公表することができた。 ①「歴史的庭園を主体としたガーデンツーリズムの提案―奈良県と愛媛県を事例として―」(『観光学』28号)では、国土交通省庭園間交流促進計画登録制度(ガーデンツーリズム登録制度)のフォーマットに準拠した計画案を提案した。奈良県については古代から近代までの歴史的庭園が遺るという独自性に基づいた計画、愛媛県については近世城郭の特性をよく遺した複数の城跡公園を中心に据えた計画とした。この計画案については、奈良・愛媛両県の公園担当部局に抜き刷りを送付し、今後の計画等のための資料としての活用を依頼した。本稿の内容は、地域を限ったものではあるが、庭園観光の適切かつ持続的な在り方についての包括的展望を示したものとなっている。 ②「室町時代朝鮮使節を魅了した西芳寺庭園」(『大阪観光大学研究論集』23号)では、西芳寺を夢窓疎石中興後80年ないし100年後の15世紀中葉に訪れた李氏朝鮮使節がその庭園を絶賛した記録について論じ、自然景観をモチーフとした回遊式庭園という李氏朝鮮には存在しない様式と傑出した出来栄えが非日常空間として朝鮮使節に大きな感銘を与えたとの結論を導いた。このことに基づき、その後江戸時代に多く築造された回遊式庭園が、現代においても訪日外国人観光者には非日常空間として大きな観光的ポテンシャルを持ちうることを指摘した。 ③「名勝粉河寺庭園の作庭位置・意匠の含意と作庭の目的について」(『和歌山県文化財センター紀要』創刊号)では、本堂前の段差を利用した連続的石組である粉河寺庭園について、その作庭位置と意匠は観音菩薩の補陀落浄土の表象であり、宗教観光・西国三十三所巡礼の参拝者への歓迎を表す意で造営されたものとの解釈を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、平成31(令和1)~令和3年度に、個別の庭園の観光活用と運営等に関する研究として兼六園(金沢市)・養浩館(福井市)・玄宮楽々園(彦根市)を事例に取りまとめた。また、令和3年度には、新型コロナウィルス感染症による行動制限のなか、オンラインアンケート調査の手法を用いて京都の庭園観光の実態把握を行い、その結果に基づき、観光資源としての情報提供の在り方、オーバーキャパシティへの対応、入場料金に関する対応についての提案を行った。さらに、令和4年度には、庭園観光計画として奈良県・愛媛県におけるケーススタディを実施し、一定地域における庭園観光の適切かつ持続的な在り方についての包括的展望を示した。これらの研究は、庭園観光の現状を実証的に解明し、あるいは今後の展望を示したものであり、いずれも庭園観光の実際的な取り組みにフィードバックされることを期待している。 一方、令和4年度には、西芳寺庭園と粉河寺庭園を事例とした庭園観光の歴史に関する論考も作成した。庭園と庭園観光を歴史的視座からとらえることで、現代における庭園観光に資する庭園の在り方を考察するという方法論を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
再度の期間延長後の最終年度となる令和5年度には、一定地域の庭園観光計画の提案(京都を想定)を行うとともに、庭園観光と眺望観光・宗教観光等との関係についての調査研究を進める計画である。これまでの研究成果と合わせ、本研究の当初の目的であった「個別の庭園が観光資源としてより適切かつ持続的に活用されるための運営手法の提示」「庭園観光の適切かつ持続的な在り方についての包括的展望」を達成するとともに、本研究に関連した今後の研究の展開につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症による行動制限が緩和されつつも継続していたため、現地調査等を予定どおりに行うことができず次年度使用額が生じた。次年度は再延長の最終年度として、京都やその他地域に所在する庭園観光関連資源の現地調査を中心に実施する計画である。
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