研究課題/領域番号 |
19K12549
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
越智 正樹 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (90609801)
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研究分担者 |
石黒 侑介 北海道大学, 観光学高等研究センター, 准教授 (00743238)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会的価値 / DMO / 辺境 / 観光社会学 / 観光経営学 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、4つの「核心的問い」と、これらに答えるための6つの「小プロジェクト(PJ)」から成り立っている。初年度は、[核心的問いA]「DMOが創出し得る社会的価値とは何か(略記)」に対応するPJのうちの1つである[PJ1]「社会的価値の分析概念化」と、[核心的問いC]「DMOはいかなる経営プロセスにおいて社会的価値を創出しうるか」に答えるためのPJのうちの1つである[PJ2]「DMO経営における社会的価値創造プロセスの分析フレームワーク試作」の一部、さらに[核心的問いB]「周縁の中でも特殊な辺境地域におけるDMO構築プロセスには、いかなる社会的・経営的課題が共通して存在するか(略記)」に答えるためのPJのうちの1つである[PJ5-1]「PJ4の結果を使用した八重山調査」の一部(※PJ4はまだ実施できないため、事例の経過状況調査)を実施した。このうちPJ1は研究代表者、PJ2は研究分担者、PJ5-1は代表者と分担者が共同で担当した。 これら本年度の成果は、まず、国内外の社会学や経営学(特に経営倫理学)、社会政策学等の分野における多くの先行研究に基づいて、本研究の根幹概念となる「社会的価値(の創出)」を明確に概念化したところにある。合わせて国内のDMOにおける地域住民との関係の実態に関する類型化と集計も終えており、これらの成果は2020年度の全国学会大会報告および論文投稿にて公表することが決定した。八重山DMOの事例経過状況調査においては、同組織が設立から5年と比較的若く、また規模も相対的に小さいことが、社会的価値の創出における障壁となっていることが強く示唆される結果を得た。これらは [核心的問いB]で言うところの「社会的・経営的課題」として位置づけられるものであり、国外の関連研究等との比較を踏まえ、2ヶ年度目に同じく論文投稿の形で公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず本年度における各PJの進捗状況(PJ1の完了、PJ2の一部実施(2ヶ年度目にまたがって)、PJ5-1の一部実施(3ヶ年度目に本調査))は、当初の計画通りである。 もっとも、PJ1に関する論文投稿を計画していたものの、これは実施しなかった。ただしその理由は、学会大会報告と論文投稿とを2ヶ年度目に実施することが決定したためである。つまり、年度としては次年度にずれ込むこととなったが、研究全体の中での成果公表計画の上では支障がない。
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今後の研究の推進方策 |
2ヶ年度目には、次のPJ実施を計画している。すなわち、先述の[PJ2]「DMO経営における社会的価値創造プロセスの分析フレームワーク試作」の継続と完了(分担者)、PJ1、2の成果を用いた[PJ3]「社会的価値創出事例を対象としたプリテスト」の実施(代表者・分担者)、[PJ4]「PJ3を踏まえ、PJ1とPJ2の成果の相互レビュー」(代表者・分担者)、および[PJ5-2]「PJ4の結果を使用した知床調査」の一部実施(事例経過状況調査)(代表者・分担者)、である。このうちPJ2~4の実施によって、本研究の[核心的問いA]「DMOが創出し得る社会的価値とは何か。その上でDMOはどのような公共的役割をどの程度まで果たし得るか」、および[核心的問いC]「DMOはいかなる経営プロセスにおいて社会的価値を創出しうるか」に対する答えを出すことになる。 一方、PJ5-2の対象地である知床では、2019年度に大きな変化があった。本研究着手時には想定していなかった政治社会的文脈において、急きょDMO編成が行われたのである。このためPJ5-2の実施・分析手法、およびPJ5-1(八重山DMO)との比較分析のあり方については再検討する必要が生じた。 PJ5-1も5-2も本調査は3ヶ年度目に予定しているので、本年度はこの再検討も合わせて行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロジェクト5-1八重山DMO事例経過状況調査について、当初計画では、プロジェクト5-2の対象事例である知床DMO関係団体の研究協力者にも参加していただく予定であった。しかし、年度途中で急きょ当該地行政により、予期していなかった形で当該地DMOが編成された事を受け、「研究協力者」の再検討を余儀なくされた。その結果、本年度においては研究協力者の参加は断念し、代わって調査補助者(人件費なし)を1名追加することとした。その結果、予算配分に若干の誤差が生じた。 2ヶ年度目においては、知床DMOに関する調査計画を再検討し、その中で「次年度使用額」となった予算を執行する予定である。
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