研究課題/領域番号 |
19K12552
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
桐山 恵子 京都府立大学, 文学部, 准教授 (50432597)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マリー・コレリ / シェイクスピア / リテラリー・ツーリズム / 観光 / ストラトフォード・アポン・エイボン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ウィリアム・シェイクスピア生誕地かつ没地である英国ストラトフォード・アポン・エイボンを「リテラリー・ツーリズム」――文学的な関心に基づく観光――の観点から考察することにより、「文学」と「観光」との相関関係を追求することにある。とくにシェイクスピアへの憧憬から当地に居を構え、新聞や雑誌への寄稿・講演などを通して、シェイクスピア関連史跡の保存・修復および当地の街並み保存に多大なる貢献をしたマリー・コレリに着目することにより、ルネッサンス時代の文豪ゆかりの土地の観光地化に、ヴィクトリア朝ベストセラー作家が果たした功績を明らかにする。 本年度は、ストラトフォード・アポン・エイボンでの実地調査(e.g.現在、バーミンガム大学が所有し、シェイクスピア・インスティテュートとなっている、マリー・コレリのかつての自宅Mason Croft、アメリカとの友好関係の証でもあるHarvard House、シェイクスピアの墓があるHoly Trinity Churchなど)を行うことにより、今日のツーリストにとっても観光の目玉となっているシェイクスピア関連史跡の多くが、コレリの保存運動と密接に関わっていたことを確認した。 またシェイクスピア・バースプレイス・トラスト図書館において、コレリの書簡、講演原稿、新聞や雑誌への寄稿記事、当時のガイドブックなどの資料調査・収集にあたった。なお今年度、収集した資料の本格的な分析は、来年度に実施する計画である。 さらにバーミンガム大学名誉教授であるモーリーン・ベルと対談し、ヴィクトリア朝リテラリー・ツーリズムにおいて、コレリ研究が果たす意義について意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国ストラトフォード・アポン・エイボンでの現地調査により、マリー・コレリが、シェイクスピア関連史跡およびチューダー朝の建造物の修復・保存につとめ、当地の観光産業に多大な貢献をなしてきたことが実証された。それと同時に、ヴィクトリア朝においては、土産物として彼女の写真やイラストが描かれたポストカードが売られるほどの人気を誇っていたコレリが、現在では正当に評価されていないことが判明した。 シェイクスピア・バースプレイス・トラスト図書館で、未発掘のコレリ関連の資料を調査・収集することにより、今後のリテラリー・ツーリズム研究のみならず、文学研究におけるコレリの再評価にもつながる可能性がみえてきた。とくにコレリ作品が、翻案小説として日本でも紹介されていたことが明らかとなり、イギリス文学を翻案した日本の小説研究においても、今後コレリが重要な研究対象となることが予想される。 なお今年度の研究成果の一部として、日本の翻案小説におけるコレリ作品の位置づけに関する論文の執筆を行い、来年度に公刊予定である。 このように本研究課題における今年度の進捗状況としては、おおむね当初の計画通りに進んでいると結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
シェイクスピア・バースプレイス・トラスト図書館で収集した資料に関して、現在、分類作業を終えた段階にあるため、今後はそれらの本格的な分析作業に着手し、ストラトフォード・アポン・エイボンの文学的観光において、コレリが果たした役割をさらに詳らかにしていきたい。入手済みの資料分析をすすめると同時に、トラスト図書館には未見の資料も多く残されているため、現地での資料調査も引き続き行う予定である。 さらにコレリ監修によるガイドブックやパンフレットを参照しつつ、ストラトフォードでの実地調査を継続し、当地におけるヴィクトリア朝の定番観光ルートがどのようなものだったのかを示したい。 また今年度の研究で明らかとなった、日本の海外翻案小説におけるコレリ作品の重要性についても、関連書籍の調査を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国ストラトフォード・アポン・エイボンでの現地調査および資料収集のために必要な旅費費用が予想よりも下回ったために、当該助成金が生じた。翌年度分の助成金とともに、調査に要する旅費および研究成果発表のための学会参加に要する旅費に充当する計画である。
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