研究課題/領域番号 |
19K12553
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
井上 祐輔 札幌大学, 地域共創学群, 准教授 (90737975)
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研究分担者 |
東郷 寛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (10469249)
山田 雄久 近畿大学, 経営学部, 教授 (10243148)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 波佐見焼 / 伝統産業 / 産地の歴史 / 歴史の活用 |
研究実績の概要 |
本年度は、収集した資料(インタビューデータ、業界紙および、組合提供資料、行政提供資料、公表されている出版物など)を基に、現代の波佐見焼産地について語られている歴史を整理・分析し、論文にまとめ、学会発表を行い公表した。理論的には、経営学における歴史の戦略的活用に関する研究において、歴史の機能とその効果が議論される一方で、歴史がどのように記述(構成)されるのかに関してあまり論じられてこなかったことを指摘した。その上で、歴史を活用しようとする行為者は歴史を超越的な一つの語りとして構成する一方で、研究者は行為者による歴史の活用を彼らの実践に依拠した特殊的な語りとして理解する必要がある点を指摘した。 このような理論的認識に従い、波佐見焼産地の近年のシェアの拡大について、産地内の異なる行為者が語る異なる歴史言説(個別企業の歴史に結びつける言説と、産地全体の歴史に結びつける言説)がどのように構成されているのかを明らかにするために、収集した資料を分析した。分析に際し、アクターネットワーク理論を用い、記述・分析した。分析の結果、一方で活用される語りの構成要素が他方には現れない点、採用される語りによって異なる問題と解決策が正当化される点、それら異なる語りが必ずしも一方が支配的になるような関係ではなく、並存している点、加えて、これらの語りによって後景化される語りの存在を明らかにした。 以上の分析から、伝統産地における歴史に関する語りの多様性が産地の創生に関係する可能性を示した。
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