研究課題/領域番号 |
19K12562
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
藤井 秀登 明治大学, 商学部, 専任教授 (90308057)
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研究分担者 |
老川 慶喜 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (10168841)
恩田 睦 明治大学, 商学部, 専任准教授 (50610466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 観光資源としての駅舎 / 観光資源としての鉄道車両 / 建築様式 / トラム |
研究実績の概要 |
ヘリテージ・ツーリズムの視点から、第1に、イギリスのセントパンクラス駅に併設されたホテルの観光資源的価値を史的に考察した。このホテルは駅舎と一体化されており、2011年3月からセントパンクラス・ルネッサンス・ホテル・ロンドンとしてアメリカのマリオット・ホテル・チェーンによって運営されている。同ホテルを含む駅舎はゴシック様式建築であり、イギリスの建築家であるジョージ・ギルバート・スコットが1865年に設計したものである。1876年にミッドランド鉄道のホテルとして開業したが、1935年には操業を停止した。その後、イギリス国鉄の事務所などになっていた。外観が教会に類似する独特な建築様式のため、1967年1月には、イギリスの登録建造物に指定されている。教会が観光対象になるように、駅舎と一体化したホテルの建物も観光対象になりうる点を指摘した。 第2に、イギリスのブラックプール・トラムの観光資源的価値を史的に分析した。イギリスで最古のトラムであり、現在も1920年代や1930年代に製造された車両をヘリテージ・トラムとして期間限定で運行している。ヘリテージ・トラムの運行や保管はブラックプール・トランスポート・サービスの所管である。旧型車両に遺産的価値を見出し、1976年から観光資源として運行しているゆえに、鉄道車両を活用したヘリテージ・ツーリズムの先進事例と位置づけられる。 第3に、東京駅丸の内駅舎の観光資源的価値を史的に考察した。同駅舎には設計者である辰野金吾の建築思想が反映されている。すなわち、華やかな屋根の装飾に象徴されるようにオフィス街に合致する自由を、また左右対称性で揺らぐことのない安定感を示している。東京駅丸の内駅舎には、ゴシック様式、クラシック様式、ルネサンス様式のようなヨーロッパ建築様式の影響があり、美術的価値を備えているため観光対象にもなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、イギリスにある鉄道遺産協会と国立鉄道博物館の関係者にヒアリングを実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、渡英を断念した。このため、関係する資料・史料が入手できていない。 こうした点を除けば、2019年度に調査した資料・史料を活用しながら、論文の作成は行なえた。具体的には、イギリスのセントパンクラス駅舎、ブラックプール・トラム、国立鉄道博物館、日本の東京駅丸の内駅舎について史的な視点から観光資源的価値を考察し、鉄道がヘリテージ・ツーリズムに寄与している事例を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大によって、本年度も渡英して鉄道遺産協会と国立鉄道博物館における資料・史料の入手が実施できないと予想される。このため、イギリスにおける鉄道を活用したヘリテージ・ツーリズムの組織的な取り組み、換言すればヘリテージ・ツーリズムからみた保存鉄道の政策的な展開を調査しにくい状況が続く。 そこで、研究の視点を変えて、第1にヘリテージ・ツーリズムの理論的な枠組みを深化すること、第2にすでに入手できたイギリス関連の資料・史料を用いて鉄道とヘリテージ・ツーリズムの事例研究を深化すること、第3に日本国内の鉄道とヘリテージ・ツーリズムの事例研究を新規に開始すること、以上3点を実施していく。 本年が研究の最終年である。だが、新型コロナウイルスの蔓延により、渡英による当初の研究を実施できないと予想される。したがって、可能であれば次年度も本研究を継続する方向を検討しながら、同時に現状で行なえる上記の研究を遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症が拡大したため、予定していた渡英での研究を実施できなかった。このため、航空券代、宿泊代、現地資料代などが支出できずに次年度使用額が生じた。2021年度も同様の状況が継続しているため、2022年度に渡英を計画している。つまり、本年度も航空券代、宿泊代、現地資料代などが支出できないので、次年度に繰り越す予定である。
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