研究課題/領域番号 |
19K12562
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
藤井 秀登 明治大学, 商学部, 専任教授 (90308057)
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研究分担者 |
老川 慶喜 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (10168841)
恩田 睦 明治大学, 商学部, 専任准教授 (50610466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テーマ環境 / テーマ空間 / クロノトポス / 場所の経験 / ヨーク英国国立鉄道博物館 / 高輪築堤跡 / 赤沢森林鉄道 / 丸瀬布森林鉄道 |
研究実績の概要 |
第1に、イギリスの歴史都市であるヨークを事例として、ヘリテージ・ツーリズムと保存鉄道との関係を考察した。ヨークには、英国国立鉄道博物館がある。同博物館の起源は、公共用輸送として世界で最古のストックトン・ダーリンントン鉄道の系譜に連なるノース・イースタン鉄道が、自社の鉄道遺産を保管・展示した博物館を創設した1928年頃にまで遡れる。ノース・イースタン鉄道が博物館を設置した背景には、1921年鉄道法により、同鉄道がロンドン・ノース・イースタン鉄道に吸収・合併され、自社遺産が散逸する可能性があったからである。1947年運輸法によりロンドン・ノース・イースタン鉄道が国有化されたため、この博物館は1975年9月にヨーク英国国立鉄道博物館となった。この鉄道博物館を対象に、収集、教育、娯楽の機能をまず考察した。この結果、ヨーク英国国立鉄道博物館およびヨーク旧市街に教育と娯楽の二重性があることがわかった。つまり、それらは重層化された場所の経験を来訪者に提供する観光資源といえる。さらに、ヨーク英国国立鉄道博物館とヨーク旧市街は、統一した時間と空間、すなわちクロノトポスとしても景観がテーマ化されていた。そこでは、文化、教育、娯楽がシナリオ化、劇場化されたテーマ環境とテーマ化された景観を通じて、専門家の知見が来訪者へ開示されていた。 第2に、日本における鉄道遺産の保存について、高輪築堤跡、長野県の赤沢森林鉄道と北海道の丸瀬布森林鉄道を考察した。高輪築堤跡については、JR東日本の都市再開発事業と連動するため、それをヘリテージ・ツーリズムの対象として保存することを提言した。森林鉄道は、森林から伐採した原木を工場まで搬送するために使用されていた。両者は森林鉄道を観光資源として再利用した事例である。自然観光資源と遺産的価値をもつ森林鉄道との組み合わせによって、地域振興が実施されている点を明らかにした。
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