研究課題/領域番号 |
19K12565
|
研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
小池 則満 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50293741)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 津波避難 / 遊漁船業 / 観光漁業 / 観光防災 |
研究実績の概要 |
本研究では、『海面利用実態を的確に捉えた上で、遊漁船業の津波防災計画策定手法の開発を目指す』を目的として掲げ、本年度は、遊漁船業の営業実態から災害リスクを的確に把握するための海面利用に関する調査を重点的に行った。調査対象地域として南海トラフ地震による津波来襲が危惧される三重県度会郡南伊勢町を取り上げた。リアス式海岸が続き、豊かな漁場が生成されており、釣り客などの来訪が多い地域である。 まず、養殖業を営む傍ら、里海のガイドを行う漁業者に対してヒアリング調査を実施した。あわせて船上および陸上より、海上に浮かぶ漁業関連施設や海岸沿いにある施設について、現在使われなくなったものも含めて調査を行った。 次に観光協会が実施する遊漁船業者の避難訓練に参加し、ヒアリング調査およびGPSおよび動画による位置の追跡等を行った。訓練は船舶2隻によって行われ、3か所の上陸ポイントへの避難や一時津波避難場所の状況確認などがなされた。また、当該地域の区画漁業権の設定状況やその歴史的経緯について、史料保存館にて調査を行った。 以上のような取り組みを通じて、当該地域における海域の利用状況について、歴史的な経緯も含めて把握することができた。真珠養殖が盛んだった頃の施設が多数残存しており、これらが緊急避難場所となり得ることや、空間的な最寄の上陸ポイントが区画漁業権とは必ずしも一致していないことから、母港以外の避難を前提とした計画を湾内全体で行っておくべきことを指摘した。 以上の通り、現地調査等により収集したデータに基づいて、津波警報等が発表された場合の対応方法に区間漁業権との関連もあわせて考察することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において示した2項目について進捗状況を整理する。 【1.近世の入会漁場と現代の遊漁船業の漁業権との関連を調査する。】については、特に、明治期以降の調査対象地域における漁業法改正への対応や現在の共同漁業権の設定状況などについて資料整理等を進めることができた。また、現在の海面利用の状況、釣り筏などの遊漁船業に関わる施設の分布状況の調査も進めることができた。 【2.観光地としての特性も捉えた海面利用実態調査を実施する。】については、上述の海面利用調査に加えて、観光協会が行う津波避難訓練に参加することができた。ヒアリングの良い機会になったほか、GPSで航跡が追跡するなど、良質なデータ収集を行うこともでき、研究の進捗につながった。 以上の通り、文献調査、現地調査(漁業者へのヒアリング調査、避難訓練でのデータ収集、海上施設の分布状況調査)いずれも順調に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、海面利用実態調査を継続して行うとともに、遊漁船業者の防災力向上、事業継続計画に対する具体的な知見(リスク認知、情報伝達、避難経路・場所、避難後の釣り客への対応等)を求める評価モデルを構築する。評価モデルは可能な限り定量的指標を用い、最終的には「カルテ方式」として改善点などをわかりやすく図示できるようにする。調査対象地域としては、前年度同様に南伊勢町を考えるが、比較対象地域を設定して広く検討できるように、同じく南海トラフ地震への対応が求められている県の沿岸部における遊漁船業の現状について、調査を進めることを考える。 当初からの研究環境の変化としては、新型コロナウイルス感染防止のために、現地調査がスムーズに行えない事態が想定される。この場合には文献調査や空間分析による定量的評価などを進めていきたいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染防止のために参加予定の学会が中止となったことから、旅費等の支出が予定より少なくなったが、研究自体はおおむね順調である。来年度は積極的な現地調査や学会発表を行いたいと考える。
|