研究実績の概要 |
本研究では、2019年ラグビーワールドカップトーナメント(RWC)の東大阪市花園ラグビー場における観客の動的調査を実施した。位置情報のビッグデータを使用して、観客の属性,発地分析、旅程分析、宿泊地分析、立ち寄り分析、観光エリア分析、時間帯別流入出者・滞在者分析、平均昼間滞在時間分析、周遊分析の9つの項目から花園ラグビー場に訪れた観客属性及び行動特徴における調査結果を表としてまとめている。RWCは、近畿圏内を中心に広く男性20代、40~50代の誘客増をもたらした。一方で、観戦者の目的はあくまでラグビー観戦であり、場内外の立ち寄りは広域の交通利便性の高い大阪市や最寄り駅である東花巻駅などの交通結節点に限られる。また、近畿圏以外からの誘客割合は少なく、結果、試合観戦のでみで他への立ち寄りをしなければ、日帰り旅程が組める範囲であったことも影響し、RWCに関係ない観光エリアへの立ち寄りはほとんど見られなかった。このことから東大阪の交流人口拡大のためには、単に市内でRWCの試合を開催するだけでは周辺観光エリアへの効果波及は極めて限定的であり、より遠方から宿泊を伴う旅程を組む必要がある観光者割合を高めるほか、RWCとの連携イベントやRWCの客層に合わせた市内宿泊・周遊を高めるための施策を同時に実施し、その効果を新たに創出することが求められる。そうした企画立案にあたっては、本研究で把握された属性および行動特徴をもとにターゲット客層、施策実施場所、開催・終了時間帯を選定し、施策の成功確度を高めるとともに、場内宿泊数や滞在時間、周遊箇所数など、施策によって期待する定量的な目標値を設定することが可能になる。本研究で活用した位置情報ビックデータなどにより、定量的にイベント観戦者の動態把握をすることは地域の交流人口拡大を目的とした企画立案・評価に有用で、自治体の説明責任を果たすことが可能である。
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