研究課題/領域番号 |
19K12571
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
大方 優子 九州産業大学, 地域共創学部, 准教授 (30390313)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 旅行者エンゲージメント |
研究実績の概要 |
観光市場が成熟化し観光地間の競争が高まるわが国において、旅行先である地域と旅行者とのより強固な関係性を構築することが、これからの観光地マーケティングにおける大きな課題となっている。このような現状を踏まえ、本研究は、旅行先である地域と旅行者との関係性構築について、消費者行動論における「顧客エンゲージメント」の概念を援用し、「(旅行先に対する)旅行者エンゲージメント」の構築プロセスモデルを提示することを目的としている。 研究初年度であるR1年度は、エンゲージメント概念の整理と仮説モデルの検討を行った。まず、消費者行動研究の領域での「顧客エンゲージメント」に関する文献を整理し、その構成概念について検討した。その結果、顧客エンゲージメントとは「購買を超えた顧客と企業(ブランド)との相互作用やつながりの強さ」であり、行動面(推奨、影響、知識提供、参画)および態度面(帰属、熱狂、注目、没頭)の2次元で構成されていること、またその先行要因としては、満足、愛着、ロイヤルティ、コミットメント、関与が挙げられていることがわかった。 そして、この顧客エンゲージメント概念を「旅行者」という対象に援用することの妥当性について、旅行者行動に関する先行研究(特に、満足・愛着、ロイヤルティ研究)を参照し検討した。その結果、特定の旅行先に対する旅行者エンゲージメント構築を検討するにあたり、旅行者、地域、状況の3つの視点からその先行要因を検討する必要があることが示唆された。また、これらに加え、現在、旅行者エンゲージメントに該当する国内事例を対象とした事例研究を行い検討を深めている。これらの検討を通じ、「旅行者エンゲージメント」の構成概念を精査したうえで仮説モデルを提示し、今後その有効性を実証していく流れである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度中に、仮説モデルの構築、およびその一部についての定量調査を通じた検証まで着手する予定であった。しかしながら、仮説モデルの構築にあたっての事例研究(現地にてのインタビュー調査)について、新型コロナウィルス感染拡大による移動上の制約といった想定外の事態が発生したため、研究方法の見直しなどの対応を余儀なくされた。 これらの理由により、当初の計画よりやや遅れているという状況である。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたとおり、現地でのインタビュー調査の目途が立たないため、代替策としてオンラインでの定性調査に変更し、現在調査設計まで完了したところである。調査では、特定の旅行先へのエンゲージメントが高い旅行者を対象に、その地域とのかかわり方(行動)およびその地域への思い(態度)、およびその地域とのかかわりを持つようになった経緯(先行要因)について自由回答形式での質問を実施する。これらの回答をテキストマイニングで分析し、その結果を基に旅行者エンゲージメントの構成概念を抽出し、旅行者エンゲージメント構築プロセスの仮説モデルを提示する予定である(R2年度前半)。構築したモデルについては国内の観光系学会等で発表し、そこでの議論をもとに精査していく(R2年度後半)。その後、最終的に提示されたモデルについて、定量調査を実施し、その有効性を段階的に検証していく予定である(R2年度後半に一部実施)。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた事例研究のうち、現地でのインタビュー調査が実施できなかったため、そのための費用が次年度使用額として生じることとなった。これらについては、研究方法をオンラインでの調査に変更し、翌年度にただちに実施する。また、当初計画していた次段階での調査(検証のための定量調査)も計画通り実施する予定である。主にこれら2件の調査委託費、および調査実施に関連する物品費等として助成金を使用する計画である。
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