研究課題/領域番号 |
19K12573
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
枝川 明敬 東京藝術大学, 大学院国際芸術創造研究科, 教授 (60272283)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域振興 / 地域経済と劇場 / 劇場の生産関数 / 文化政策 / 芸術支援 |
研究実績の概要 |
本研究の学術的な独自性は,第一に地域社会と文化について,地域の舞台芸術を行う拠点である劇場・ホールを地域再生との関係性で分析することにある.2021年度は研究の最終年次として,その成果のとりまとめや成果発表を行う予定であった.コロナ蔓延状況下において,一部地域調査が行えず研究成果を取り入れた書籍出版(枝川明敬『文化政策の論理と芸術支援の実際』晃洋書房)および論文集(枝川明敬『GA論文集(GAジャーナル特集号)』)を発刊したほか,オリパラ関連学術集会(日本とスイスとの共同集会[2021 Online Symposium]Smart ities and Creativity),文化庁主催先進的文化芸術創造活用拠点形成事業成果報告会で研究成果を発表した. 研究成果としては,劇場の生産関数や文化産業の地域連携モデルを産業連関表を作成し,そのモデルシミュレーションから,劇場の大型化はオーディエンスの寡占化を招く一方,文化産業のジャンル別によって,地域経済への波及効果がかなり相違することを示した.特に劇場の生産関数分析場面からは,地方劇場(オーディエンスを地域社会にもとめ,地域に根付いている劇場)では,大型劇場(全国的にオーディエンスを集めている1,500席をもつような劇場)と違い,規模に関して一定型の生産関数が推定され,使用客席数(資本)より職員数(労働)の寄与度が大型の劇場に比べて極めて高く,資本と労働の限界代替率が大きいことが知れた.大型劇場では資本代替率は概ね1に近いが,地方の劇場では8以上である.また,資本・労働以外の係数として,劇場本来の舞台活動指標が有意であり,舞台活動が盛んであるほど収入も増加することは,大型劇場・地方劇場を問わず一致している.全体的なオーディエンスの減少が見られる中で,持続的競争有意を図るためには,劇場規模に関わらず劇場固有の運営資源を統合・活用できる人材の育成や彼らがもつ知的資源の伝承が必要であることが指摘できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に対しては80%程度進捗したが,コロナ蔓延状況下にあって地方への状況調査が一部遠隔で行わざるを得なかった.そのため,成果については書籍,論文集,オリパラ関連学術集会([2021 Online Symposium]Smart Cities and Creativity)で発表したが,補完的調査を2022年度に行う予定で,研究延長を申請し許可されている.
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今後の研究の推進方策 |
研究成果については,ほぼ出版物,論文集,研究集会,実務者発表会で公開しているが,コロナ蔓延のため,地方への実地調査が遠隔による調査となったので,可能な限り補完的実地調査・補完的文献調査を行い,研究の完全性を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ蔓延およびそのための移動等規制のため,地方での現地調査や専門家からの聞き取りなど作業日程が狂った.そこで,2022年度においては,さらに研究進展を回復するため,関係研究者などを加え,彼らに研究活動の分担や協力を依頼し研究費の一層の効率的運用を図る予定である.そのため,必要に応じJSPSに対して研究協力者の申請を行うことも考えている.
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