研究課題/領域番号 |
19K12577
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
太田 隆之 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (50467221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 観光のダイナミズム / 持続可能な発展 / 観光地 / 財政的基盤 |
研究実績の概要 |
本研究は、観光地において中・長期的なタームで起こる観光需要の変動である「観光地のライフサイクル」仮説と、短期的な観光需要である季節変動が観光地と観光地自治体の財政に与える影響に注目し、その実態を明らかにするとともに、「持続可能な観光地」の実現に向けた観光地自治体の財政的基盤を検討することを目的にしている。2019年度は、本研究の対象事例地である静岡県伊豆地域の観光都市自治体の決算カード40年分をはじめとしたをはじめとした資料収集を行い、過去の財政データについて必要な資料は概ね集めながら、各自治体の歳入項目、歳出項目に関する基礎的なデータセットを構築することができた。 その上で、対象地の1つである静岡県伊東市と東伊豆町の財政分析を行った。この研究では特に中・長期的な観光需要の変動を扱う「観光地のライフサイクル」仮説に注目し、両地域の経済と自治体がこの影響を受けてきたこと、自治体財政については自主財源を中心に歳入項目がこの変動に沿う形で変動する一方で、観光需要の変動に関わらず観光地維持のための財政需要は一定程度あり、観光地自治体の財政運営が一貫して厳しい状況にあることを明らかにした。一連の成果は日本公共政策学会関西支部大会で報告し、その後伊東市に焦点を当てた論文を執筆し、学術雑誌に投稿して査読を経て掲載するに至った。 また、ドイツ・ボン大学の日本学研究者らとボン大学で研究会を行い、上記の研究を含む研究成果の報告を行うとともに、今後の共同研究のテーマや内容について検討した。今後、ボン大学でシンポジウムを実施して共同研究に向けた取り組みを進めていくこと、ボン大学の日本学研究者の成果も日本で公開していくことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は対象事例地での聞き取り調査は十分にできなかったものの、本研究課題の対象事例としている自治体に関する必要な財政データを概ね収集することができた。そして、本研究課題において基礎課題の1つに据えている「観光地のライフサイクル」仮説に基づいた事例検証の研究成果を学会報告の上学術雑誌で公刊することができた。 更に、ドイツ・ボン大学に行き、日本学研究者らと研究会を行うとともに、今後の共同研究について打ち合わせを行うことができた。研究代表者がボン大学での在外研究を終えて帰国して以降互いに研究交流を行うことがなかなかできずにいたが、本研究課題が採択されたことで研究会、打ち合わせを実施し、今後の共同研究に関する具体的なテーマ設定やボン大学でのシンポジウムなどについて議論ができたことは今後の研究の進展を図る上で意義があった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度十分にできなかった事例対象地での聞き取り調査を中心に行っていく。既に基礎的な財政データはほぼ入手出来ているので、中・長期ならびに短期の観光需要の変動の影響下にある自治体の財政運営の実態や各歳入・歳出項目の動向に関する聞き取り調査を行い、論文執筆に取り組んでいく。全般的な財政運営の経緯について調査するだけではなく、2019年度の研究成果を踏まえ、観光地特有の財政需要に対して各自治体がどのように対処してきたか、ということなど、観光地運営に関する具体的なテーマを設定して聞き取り調査を実施していく。加えて、各地の観光協会などにも聞き取り調査を行い、最新の観光動向も把握していく。 昨今の状況においては、コロナ禍の影響を無視して本研究に取り組んでいくことはできない。「持続可能な観光地」の実現をテーマに掲げている本研究では、コロナ禍にある地域経済の状況や自治体による地域政策の実施状況、また直近の財政運営状況についても情報収集を行いながら、上記の聞き取り調査を行う際に併せてこれらの諸点についても調査を行い、研究に取り組んでいく。 コロナ禍の改善が図られることが前提になるが、ボン大学との研究交流は引き続き進めていく。当面、先方が企画しているシンポジウムに参加し、研究報告ができるように準備を進めていくとともに、今後の観光地運営の日独共同研究に関する準備も進めていく。
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