研究課題/領域番号 |
19K12579
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松隈 久昭 大分大学, 経済学部, 教授 (60238996)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域団体商標 / ブランド / 温泉 / マーケティング / DMO |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、事例研究とアンケート調査に基づき、地域団体商標による温泉地ブランドの構築とその成果について比較研究を行うことである。主な分析枠組みとして、ブランド論、エリアマーケティング論などを用いる。 本年度も新型コロナ感染症の影響があるため、対面でのDMO(観光地域づくり法人)などへのヒアリング調査は控えた。それゆえ、温泉地のブランド構築、地域団体商標、DMOについて、先行研究を整理した。特に、本年度は主に関東地域の温泉地を分析対象にした。その理由として人口が集中している関東から近い温泉地への動向を把握するためである。温泉地を含めた観光地の魅力の要因として、既存の研究では距離が近いことがあげられている。つまり立地であり、遠距離でも交通の便が良くアクセスが容易であることも重要な要因となる。 具体的には、地域団体商標を得ている温泉地として千葉県の鴨川温泉と小湊温泉、栃木県の塩原温泉、鬼怒川温泉、川治温泉、新潟県の越後湯沢温泉に関して、観光地の魅力を文献により整理した。その他にも一般の温泉地としては、伊豆諸島の6島に関する資料を得て、その魅力を整理した。さらに、DMOに関しては神奈川県の地域DMOである横浜市、鎌倉市、小田原市、箱根町、地域連携DMOとして宮ヶ瀬ダム周辺振興財団、かながわ西観光コンベンション・ビューローに関する資料を得て、それぞれのDMOの目的と組織構造、温泉地との関係性などを整理した。 研究実績としては、日本広告学会九州部会にて「観光地域づくり法人(DMO)の役割とプロモーションの評価」というテーマで研究報告を行った。報告では、観光庁によるDMOの定義、目的、登録制度などを説明し、地域連携DMOである「ツーリズムおおいた」の活動と他地域のDMOの活動やKPIを比較し、それらの成果を示した。また、プロモーション動画に関する評価結果を説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和4年度の新型コロナ感染症の患者数は減少傾向になった。それに伴い少しずつ国内観光客数もインバウンド数も増加してきた。しかし、感染の恐れがあるため国内の調査は資料収集のみを行い、旅館やDMO関係者のヒアリング調査は中止した。主要な温泉地にある宿泊業者は、コロナ対策をして営業していたが、今後、経営環境は改善すると推測できる。しかし、経営規模を縮小していた宿泊施設がすぐに従業員を増員することは難しい。従業員は他の職に就いていることが多いためである。 また、計画していた国外のDMO(観光地域づくり法人)への調査に関しては、入国制限措置などにより中止した。本研究は継続が認められたので、次年度に時機を見て調査を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、新型コロナ感染予防対策により延期したヒアリング調査を行いたい。具体的には、地域団体商標を得ている代表的な旅館協同組合を対象にして調査を予定している。なお、旅館協同組合は、個々の旅館が共同して宣伝、共同購入事業などを行う組織である。ヒアリングの内容は、個々の旅館により組織化された旅館協同組合による地域団体商標の取得の理由、それによる温泉地ブランドの構築とその競争優位性などである。次に、国外の先進的DMOを対象としたヒアリング調査も行う予定である。具体的には、DMOの成果指標であるKPIの設定を中心に調査を進めたい。 また、これまで行ってきた人文地理学のエリア研究、観光心理学の旅行者満足度研究、マーケティング論における地域ブランド研究に関する文献調査の結果を整理する。特に、プレイス・ブランディングの概念を中心として温泉地の役割を検討したい。 最後に、これまでの文献研究をまとめて、温泉地のブランド力や地域団体商標を取得した目的などを問うアンケート調査を行い、論文の作成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度後半より、新型コロナ感染症の感染者数は減少傾向になった。しかし、対面でのヒアリング調査は感染予防のため控えた。ゆえに、今年度も資料収集調査を行った。また、海外の代表的DMOの調査も出国が難しく、次年度に延期した。そのため予算の残額が多くなった。また、宿泊業者を中心としたアンケート調査も、観光に関する事業環境が悪く中止した。 現時点では、新型コロナ感染症は収束傾向にあるので、次年度は予定していたヒアリング調査などを実施したい。
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