研究課題/領域番号 |
19K12589
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
浦野 寛子 立正大学, 経営学部, 教授 (40585957)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | おもてなし / ホスピタリティ / サービス / マーケティング / 海外展開 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は3つある。第1に、「おもてなし」概念やそれを構成する要素を明示する。第2に、日本企業の主な進出先であると考えられるアメリカ・中国・台湾の消費者が、日本の「おもてなし」をどう捉え、どのような要素に特に注目・期待しているかを明らかにする。第3に、「おもてなし」の海外展開戦略を立てる際に依拠する枠組みを構築することである。 本研究は今年が初年度にあたる。本年度の研究予定としては、文献調査、アメリカの消費者へのインターネット調査、海外展開している企業に対するインタビュー調査を行う予定であった。研究実績としては、文献調査は予定通り行った。具体的には、「おもてなし」「ホスピタリティ」に関連した書籍・論文より、「おもてなし」の特徴を抽出した。これまで必ずしも明確化されてこなかった「おもてなし」の本質について、「おもてなし」に概念が近いとも言われる「ホスピタリティ」と比較しながら、その特徴について類似点・相違点を明らかにした。 また、文献調査に加え、現代の産業界における「おもてなし」概念の捉え方、「おもてなし」概念を成立させる要因、「おもてなし」を標榜しての世界展開について、アメリカ・中国・台湾へ赴き、ヒアリング調査を重ねると共に、現地資料収集も行った。調査対象としては、「おもてなし」に非常に関連が深いと考えられる宿泊業界を主なターゲットとした。具体的な企業名としては、「オークラ」や「ニッコー ホテル」「加賀屋」等に対して調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である今年度は、文献調査から、日本の歴史・文化に基づく日本特有の「おもてなし」概念に着目した上で、「おもてなし」と「ホスピタリティ」に共通する部分・異なる部分を見出した後、「おもてなし」独特の要素をまとめた。そのうえで、「おもてなし」とは何か(概念・定義)、「おもてなし」の構成要素は何かについて詳細に整理した。 また、「おもてなし」を海外展開するにあたって、「海外の消費者は『おもてなし』や『ホスピタリティ』をどのようなものだと認識し、いかなる要素を期待・要望しているのか。」という問いに対する知見を得るため、アメリカ・中国・台湾の企業に対して、ヒアリング調査を行った。このヒアリングにおいては、国民性の違いから、『おもてなし』や『ホスピタリティ』に関して、求める内容がいくつかの点で異なることが見いだされ、日本のサービス業の海外進出に対する可能性と問題点に関して、いくつかの仮説を導き出すことができた。海外展開している企業に対するインタビュー調査に関しては、初年度で3か国訪問することが出来、当初の計画以上に進捗させることができた。 最後に、アメリカの消費者へのインターネット調査に関してだが、こちらは予算削減のため、次年度へ繰り越し、次年度予定していた中国・台湾へのインターネット調査とまとめて同時に行うこととした。ただ、アンケートの設問項目構成に関しては本年度にほぼ完成させている。 全体の進捗状況としては、以上述べたことから、「おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、インタビュー調査として、「おもてなしする側」である産業界(企業)に対するヒアリング調査を行ったが、次年度に関しては、「おもてなしされる側」である消費者に対するアンケート調査の実施と分析を中心に行う予定である。 具体的には、アメリカ・中国・台湾の消費者に対してそれぞれインターネット調査を行う。何れも「おもてなし」に関してある程度認知・理解があると考えられる「3年以内に訪日経験がある人」を対象として調査する予定である。 本研究は、「おもてなし」の海外展開に焦点をあて、海外の消費者に対してアンケート調査を行う点で独自性があると考えている。日本人に対してアンケート調査したものはあるが、3か国に渡る海外の消費者に対して、アンケート調査を行っているものはほとんどない。アンケート調査を通して、アメリカ・中国・台湾の消費者による「おもてなし」要素の認知や期待度について、調査結果を数値データとして可視化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、アメリカの消費者に対してインターネット調査を行う予定としていたが、全体の予算削減のため、次年度へ繰り越し、次年度予定していた中国・台湾へのインターネット調査とまとめて同時に行うこととした。 アンケートの設問項目構成に関しては本年度にほぼ完成させているため、次年度の調査に関しては問題なく遂行できる予定である。
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