本研究は、コロナの影響で2度延長し、今年度が最終年度の5年目となった。研究テーマである「おもてなし」は属人的要素が強く、感覚的・経験的なものである。近年の急速なデジタル化により、サービス業界は大きな変化を遂げ、「おもてなし」は「人とデジタル」を融合させた新たな「おもてなし」に変化した可能性がある。 また、急速に増加しているインバウンド需要に対応するため、現場では人手不足の問題が深刻化している。そのため、デジタル化による省力化とともに、外国人スタッフの積極的な活用が求められるようになった。しかし、言葉や文化の違いからくる「おもてなし」教育の課題が浮かび上がっている。加えて、文化的多様性への理解が、急増するインバウンド客への対応や、日本のサービス業の海外展開において、重要な要素となっている。 研究計画は、コロナの影響で延期していた中国・台湾・アメリカの消費者を対象としたインターネット調査、海外展開している企業に対するインタビュー調査を行う予定であった。しかし、状況の変化により研究内容を一部追加・変更し、以下の3つの側面から「おもてなし」を俯瞰的に研究することにした。①デジタル化による「おもてなし」概念の変化(特にデジタルネイティブ世代における「おもてなし」概念の捉え方)②言葉や文化が異なるスタッフに対する「おもてなし」教育の動向、③「おもてなし」の海外展開のあり方(特に中国・台湾・アメリカ)である。 研究実績として、大学生15名に対するデプスインタビューと394名を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を集計した。また、外国人宿泊客を多く受け入れているホテルに外国人スタッフの教育などに関するヒアリングを行い、その内容を報告書としてまとめた。さらに、異文化比較の理論的枠組みを概観し、日本、中国、台湾、アメリカの文化的特性を系統的に分析し、その内容を論文としてまとめた。
|