研究課題/領域番号 |
19K12592
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
村瀬 慶紀 常葉大学, 経営学部, 准教授 (70624386)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ホスピタリティ産業 / 知識移転 / 暗黙知 / 吸収能力 / 信頼関係 / 紐帯 / 組織の社会化 / ゲートキーパー |
研究実績の概要 |
本研究は、ホスピタリティ産業(特に海外進出を行っている日系ホテルチェーン)を対象に、知識移転を促進するためのメカニズムを実証的に解明することを目的とした。 本研究で取り上げる「知識」とは、接客従業員を対象にした顧客へのサービス提供に必要な知識、経験、ノウハウ、情報等に関する暗黙知の知識の総称を指す。それらの「移転」とは、本研究の実証研究において従属変数にあたるもので、Levin and Cross(2004)の知識の有用度(知識を受け取った人がその知識がどの程度有用であったかを測定した指標)を用いた。 本年度は知識の受け手(接客従業員)を対象に、知識の送り手(上司、同僚、他部署等)から有用度が高い知識を受容する要件を明らかにすることで、知識移転を促進するためのメカニズムを解明する手掛かりとなる。 方法としては、独立変数にあたる知識の送り手と受け手の関係性、知識の受け手のデモグラフィクス特性、職務満足度を中心に先行研究をサーベイし、アンケート調査票の精緻化を行った。具体的には、知識の受け手が知覚する能力に対する信頼性(competence-based trust)、人柄に対する信頼性(benevolence based trust)、及び一貫性(consistency)における関係性、それらと受け手自身の能力、モチベーション、職務満足との関連に基づいて、より精緻化したフレームワークを構築することができた。 残念ながら、アンケート調査の実施、解析、公表までは至らなかったが、研究期間を再度延長し、残された課題に取り組むことが次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度までは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、研究の進捗が「やや遅れている」状況であったが、2023年度からは特に実態調査に関する研究活動がスムーズに行える環境が整ってきた。 大きな実績としては、APTA(Asia Pacific Tourism Association)への海外出張において、海外の研究者との交流を再開し、彼らの仲介による調査対象企業を拡大することができた。さらに、e-mail、ZoomやWebex等を用いたオンライン等によるインタビュー調査を推進することによって、アンケート調査票の精緻化を行うことができた。 一方で、アンケート調査票を用いて調査を実施することまでは残念ながら行うことができなかった。この理由は、インタビューによる対象者(実務家)からのアドバイスにより、①知識移転の送り手と受け手の明確化(上司―部下の関係性で良いのか)、②受け手のデモグラフィクス特性、職務満足度、あるいは送り手と受け手の関係性についてより大局的なフレームワークを構築する必要性が出てきたからである。 2024年度は上記についてできるだけ早く対処を行い、調査の実施を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は最終年度に当たることから、アンケート調査の実施、集計、統計解析を行ったうえで、研究成果を論文としてとりまとめ発表を行う計画である。 アンケート調査に関しては、プレテストを国内で実施し、仮説の予備的な検証を行ったうえで、日系の海外進出しているホテルチェーン数社に対して調査を依頼する予定である。現時点では、知識の送り手と受け手の関係性をより明確にするために、共分散構造分析を用いて潜在変数及び観測変数の関係性をパス図として作成し、知識移転のメカニズムを統計学的に解明する予定である。 研究成果の公表に関しては、国内外の研究者に発信をすることを目的に英文ジャーナルに投稿を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビューによる対象者(実務家)からのアドバイスを受けて、よりフレームワークを精緻化する必要性が出てきたからである。具体的には、①知識移転の送り手と受け手の明確化(上司―部下の関係性で良いのか)、②受け手のデモグラフィクス特性、職務満足度、あるいは送り手と受け手の関係性について再考する必要があったからである。 2024年度は上記についてできるだけ早く対処を行い、調査の実施を行う予定である。
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