研究課題/領域番号 |
19K12595
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
辻本 法子 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (80633958)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インバウンド観光 / ブランド認知 / 中国人旅行者 / 観光土産 / リピート購買 / 消費者購買行動 / 学習階層モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、中国人消費者の観光土産のブランド認知と消費者特性の関係を、ブランド認知モデルを用いて明らかにし、分類されたブランドグループにリピート購買の促進に最適なマーケティング・アプローチの方法を提案することを目的としている。2019年度の研究は、以下のとおりである。 1.観光土産、ブランド認知、消費者関与、態度についての知識をさらに深めるために、文献調査により先行研究のフォローを行った。 2.純粋想起の程度が高い菓子の観光土産の14ブランドについて、「認知」「感情」「動機」の態度の3要素から構成される学習階層モデル (The learning hierarchy process) に基づいて設定した分析モデルを用いて分析(共分散構造分析)し、受け手の観光土産のブランド認知と訪日経験、消費者関与 (ブランドコミットメント、製品関与、購買意思決定) 、日本の菓子に対するブランドロイヤルティなどの関係を明らかにし、連鎖消費の可能性について考察した。結果として、ブランド認知は、個別ブランドは「ブランドコミットメント」の程度、企業ブランドは「購買意思決定 (慎重な購買) 」の程度に影響されること、地域の観光土産、中小メーカーのブランド認知は「訪日経験」の程度に影響されること、リピート購買(連鎖消費)は「日本の菓子へのブランドロイヤルティ」と「訪日経験」の程度に影響されること、が明らかになった。 3.ブランド再生 (純粋想起、助成想起) 、ブランドに対する態度、リピート購買経験、日本への観光経験 (回数) 、消費者関与尺度の項目、ブランド・コミットメント尺度のなどで構成された調査項目を設定し専門のインターネット調査会社に依頼し、2019年度の中国人の訪日観光客をスクリーニングにより抽出 (サンプル数1000) したのち、アンケート調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年までの科研費による受け手の調査データを使用し、ブランド認知モデルの改良が行えたこと、日本マーケティング・サイエンス学会での発表により、分析モデルの妥当性が確認できたこと、2020年の3月までに2019年の中国人の訪日旅行者を対象としたインターネット調査を実施できたことなど、研究は概ね順調に進めることができていると考える。 ただし、コロナウィルス感染症の影響による調査会社の中国の現地法人の臨時休業で、当初予定していた2月中の調査終了が1か月遅れたため、データの分析は2021年度以降に実施することになった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度にインターネット調査で得られたデータを用いて説検証を継続するともに、①観光土産、ブランド認知、消費者関与、態度についての知識をさらに深めるために、文献調査により先行研究のフォローを行う。②初年度の調査における課題をふまえた調査項目を設定し、観光土産の受け手を対象に観光土産のブランド想起、リピート購買経験、日本への観光経験、消費者関与についてインターネット調査を行い、モデルを用いて分析する。また、買い手と受け手のブランド認知の差異について分析する。 2021年度は、得られた結果をもとに、観光土産事業者を選定し、現状のブランド戦略などを確認する目的でインタビュー調査を実施する。あわせて、リピート購買促進のためのマーケティング施策の提案 観光産業、インバウンド観光、消費者のブランド認知、消費者関与について、文献により知見を深める。さらに買い手、受け手の分析結果にもとづき、マーケティング・アプローチの提案を行う。 なお、研究期間において、調査データの分析をすすめ、分析結果の解釈ならびにマーケティング・アプローチ方法の立案などに関して、学会発表を3回、論文3本にまとめる予定である。ただし、コロナウィルス感染症のために、所属する学会の2020年度上期の開催がすべて中止になっているために、2020年度の学会発表が出来ない可能性がある。 現時点で、外国人旅行者の入国がほぼ不可能な状況であるが、観光土産の受け手の調査は、2019年の観光土産の受贈者を対象に実施する予定であるため、実施可能と考えている。コロナウィルス感染症の収束後を見据え、さらなるインバウンド観光の発展に貢献できるよう、新たな知見を得るため研究に邁進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年に実施したインターネット調査費(科研費使用分)が当初の予算を下回ったため次年度使用額が生じた。2020年度のインターネット調査費用に加算する予定である。
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