研究課題/領域番号 |
19K12598
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
千 相哲 九州産業大学, 地域共創学部, 教授 (40287909)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インバウンド / ソーシャル・キャピタル / オーバーツーリズム / 観光振興 |
研究実績の概要 |
インバウンドの振興に伴い、地域によっては外国人観光客と地域住民間でトラブルが表面化しているところもある。本研究では、地域社会が主体的にインバンドに関わることで、地域の実情に則した受入サービスの提供ができるのではないかという仮説を立て、「ソーシャル・キャピタル」の概念を用いてインバウンドにおける地域社会の役割と機能を明らかにすることを目的としている。初年度の令和元年度では、対馬市と根室市の外国人観光客の受け入れの実態を把握することとした。 まず、オーバーツーリズムについて、西日本新聞(2019年10月20日朝刊)に「地域と観光客の関係構築を」をテーマに寄稿し、観光公害の対策として、地域の観光客受け入れの適正規模を検討するとともに、観光事業者・関係者、地域住民を含めた合意形成に努める必要があることについて論じた。 対馬の現地調査では、観光客、観光事業者にアンケート調査とヒアリングを行い、その結果を対馬市主催の対馬学フォーラム(12月8日)において「対馬における日韓観光交流の意義とこれから」をテーマに特別報告を行った。ここでは、対馬のこれまでの観光振興から住民参加を前提とした「観光まちづくり」の必要性について論じた。 また、「東京2020大会後の地域のインバウンド戦略」(九州経済調査協会『九州経済調査月報』Vol.74(pp.4-10), 2020.3.15)を発表した。ここでは、今後のインバウンド振興には観光リピーター客の増加が重要であること、そのためには地域の観光魅力の差別化、コト消費への対応などへの取り組みが必要であることについて論じた。コト消費については、地方自治体が外国人旅行者への対応に不慣れな住民へのケアをおこなうとともに、地域自らが地域の光を外部に示し、地域の伝統文化や人のあたたかさを積極的に発信する必要があることについて触れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、研究計画に基づいて調査研究に取り組み、その成果を西日本新聞(2019年10月20日朝刊)、対馬学フォーラム(12月8日)での特別報告、「東京2020大会後の地域のインバウンド戦略」(九州経済調査協会『九州経済調査月報』Vol.74,pp.4-10)に発表することができた。 しかし、昨年度末に予定していた根室での調査が新型コロナウイリス感染拡大の影響で実施できなかった。今年度中にいつでも現地調査ができるように調査地域に関する資料集めと文献調査を進めておく。
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今後の研究の推進方策 |
昨年実施できなかった根室市と今年度実施予定の長崎市、韓国釜山市でのインバウンドの実態と地域社会の取り組みについて関係者へのヒアリングを中心に調査を進める。これらの調査実施の可否は、新型コロナウイリス感染状況と社会情勢を見ながら判断したい。 調査ができる環境が整った時点では速やかに調査を実施し、調査結果をまとめ、次年度の研究につなげていきたい。 調査環境によるが、調査対象地域を令和3年度に予定している福岡市、韓国釜山市と一緒に行うなど、調査地の選定については柔軟に対応したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた理由は、昨年度末に予定していた根室での現地調査が新型コロナウイリスの影響で実施できなかったためである。これを除けば、予定通り、順調に研究が進められた。 使用計画は、社会状況を勘案しながら、根室での調査を実施するとともに、研究計画通り、予定している長崎、韓国釜山での調査を実施し、結果をまとめる。
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