コロナ禍の影響で実施できなかった現地調査を当初の計画通り、長崎市、韓国釜山、根室市で行った。 長崎での調査では、長崎に中国文化が受容・変容、再構築される歴史的土壌があったこと、中国との交流の歴史が積み重なり、文化同士が触変する過程を経験したことが多文化共生を促す土俵となったことなどの研究を行った。韓国釜山では、行政の主導により華僑の暮らしを観光資源として開発し、観光客の誘致を図ろうとして中華街が整備されたが、街の運営等において華僑の関与力が十分ではない。韓国における多文化共生とそのための将来的な社会統合を考慮する際に重要な示唆点を有していることなどの研究を行った。根室では、ロシア人来訪客の増加に市民とロシア人のふれあうコミュニティの場として提供していたが、ウクライナ情勢を巡って日本とロシアの関係が冷え込み、社会、経済面で厳しくなっている。国境の町における異文化交流、多文化共生のあり方を検討するための調査を行った。これらの調査研究の結果を令和5年度内にまとめ発表する予定である。 研究期間全体における研究の成果として、「地域と観光客の関係構築を」(寄稿)(西日本新聞 2019年10月20日)、「対馬における日韓観光交流の意義とこれから」(報告)対馬学フォーラム 2019年12月)、「東京2020大会後の地域のインバウンド戦略」(単著、九州経済調査協会『九州経済調査月報』Vol.74 pp.4-10、2020年3月)「インバウンド観光の振興と持続可能な観光の発展―コロナ禍後を見据えて」 (単著、『東アジア研究』第28号 pp.71-85、2020年12月)、「新たな価値観への対応を」(寄稿)(西日本新聞、2020年6月14日)「対馬の観光振興―ソーシャル・キャピタルの概念を用いて」(単著、『地域共創学会誌』Vol.8 pp.1-15、2022年3月)の報告、発表を行った。
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