研究課題/領域番号 |
19K12601
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
幅崎 麻紀子 埼玉大学, 研究機構, 准教授 (00401430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェンダー・クォータ / ポジティブアクション / 地方行政 / ジェンダー役割 |
研究実績の概要 |
2019年度は、地方の政治セクターへのジェンダークォータ制導入の法的な裏付けと、女性が市長に当選した選挙区の政治的な背景について、文献調査を行い、下記の結果を得た。長として女性が当選した7つの自治体のうち、長と副長ともに同一の政党の候補者が当選している地域が5か所であり、長と副長の政党が異なる自治体は2か所であった。同一政党の場合は、女性と男性が1名ずつ候補者となるように政党が調整している一方、長と副長が異なる政党の候補者が当選した場合には、2名とも女性となっていた。また、女性が市長となった自治体は、ネパール西部J郡の1つの市を除き、全てNCP(ネパール共産党)の政治家であることがわかった。 また、今年度は女性が市長を務める自治体の2つがあるネパール南部C郡にて、パイロット調査を行い、B市内に住む一般の女性と男性数名に、女性が市長となった後の地域の変容について聞き取りを行った。その結果、政治への関心が高いのは男性で、女性は関心がなく、女性が市長になったからといって、特に変化はみられないとの意見がみられた。また、選挙では、「政党に投票した」とのことで、そこにジェンダーは関係がないとの認識であった。女性の市長にも聞き取り調査を行ったところ、市政を行う上ではジェンダーは関係していないものの、同市で初めての女性の市長であるため、自分が市長として成功しなければ、後に続く女性がいなくなってしまうとの認識を持っていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、主に文献調査を中心として、地方選挙にクォータ制が導入された法的根拠について、資料を収集した。また、地方自治体の長を選ぶ選挙で、女性が当選した地域の政党の活動や立候補者の状況について、新聞資料や国際団体の報告書をもとに把握した。 現地においては、C郡を訪問し、パイロット調査を行った。具体的には、市長を務める女性への聞き取り調査を実施し、自身の政治家としての経験、市長として行ってきた事、これからの抱負について聞き取り調査を行った。また、同市の市民にも「女性市長の誕生と政治的手腕について聞き取り調査を行った。さらに、研究協力者の紹介を受け、政党関係者や市役所職員との関係を築くなど、次年度の調査に向けた準備活動を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、聞き取り調査にて収録した音声データの文字化を行い、調査データの分析を行う。また、2019年度のパイロット調査を踏まえて、現地にて、政党への聞き取り調査、政治家及び一般の人々への聞き取り調査を行うとともに、人々のジェンダーをめぐる価値観についての質問紙調査を実施する。また、これまでに収集した文献データと聞き取り調査の分析をはじめ、その一部を研究会で発表し、論文執筆の準備を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査を複数回おこなうことを計画していたが、日程調整の結果、現地訪問回数が1回となってしまったこと、また、現地調査がパイロット調査となってしまったため、現地協力者への謝金が発生しなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 本年度は、現地協力者と連絡を取りながら、複数回、現地調査を行う予定であり、そのための旅費と謝金として支出する予定である。
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