研究課題/領域番号 |
19K12601
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
幅崎 麻紀子 埼玉大学, その他部局等, 准教授 (00401430)
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研究分担者 |
原田 いづみ 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (10846314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジェンダー・クォータ / 副市長 / 女性議員への期待 / 再選の困難さ / 陳情 / 女性の暮らしへのインパクト |
研究実績の概要 |
2022年度は、ローカル社会における人々のジェンダーをめぐる価値観の変化を把握すべく、地方都市G市の農村部B村にて聞き取り調査及び参与観察を行った。同市の市長、副市長とも同一政党から立候補しており、政党ではどちらか一方を女性とする法律を遵守していた。しかし、市内の女性の代議員の数は多くはない。B村の位置するG市4区の代表者5名は全員同一政党の議員であるが、女性は区の女性代表、ダリットの女性代表の2名のみであり、クォータ制により女性の議席が確保されたポストのみ選出されている。 少数ながらも女性の副市長や代議員がいることで、一般の女性が自治体に訴える機会に増加傾向がみられる。その内容は、家庭内暴力、財産相続問題、重婚問題等であり、男性の代議員には訴えにくかった女性問題が寄せられている。このような動きは、テレビ局のトーク番組でも放送され、一般の女性たちが、女性が副市長や代議員として政治に参画するようになったことで、市が何をしてくれるのかを問う場面が見られるようになった。様々な家庭内の問題を自治体が対処すべき問題として捉えるようになるなど、ジェンダー問題への対処の仕方に、変化が起きつつある。 さらに、韓国にて国の研究所及びNPOの研究所を訪問し、情報を得た。クォータ制の導入を実施している韓国においては、政治領域での女性が増えるだけではなく、議会の要職(例えば副議長等)に女性が就くようになった。副議長や議長に就くには、数回にわたる当選回数やキャリアの長さが必要であり、要職に就くことすなわち再選される女性が誕生していることを示している。しかしながら、比例代表制で当選した議員の場合は、2回目は代表として選ばれる慣行はなく、女性議員の多くはキャリアが続かない状況にある点が課題とのことであった。また、政党によって、女性議員を育成する意思の強弱があるとのことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はコロナによる緊急事態宣言が解除されたため、現地を訪問することが可能となったが、今年度には地方統一選挙、連邦下院議員選挙が実施されたため、予定していた議員にヒアリングを実施することができなかった。しかしながら、その分、ローカルに暮らす女性たちの暮らしの変化について、参与観察を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、引き続きSNSによる女性政治家の自己表象についてのデータ収集を継続するとともに、現地調査を実施し、そのデータの分析を行う。特に、2022年の統一地方選挙及び連邦下院選の結果により、議員の入れ替わりが見られるため、選挙活動及び選挙結果に留意しながら研究を継続する。さらに、政治活動における母・娘・姉妹としての表象について、引き続きデータを収集し、分析を重ねていくとともに、ローカルに暮らす女性たちの社会進出やジェンダー規範についての考察を続ける予定である。また、これまでのデータを分析し学会等で発表し、論文執筆を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた現地調査の時期と選挙が重なり、ヒアリングのアポイントメントをとることができなかった。また、一昨年度にコロナにより実施できなかった現地訪問調査の分も2022年度に実施する予定でいたが、年度末に近くなり、現地調査を実施することが可能となったが、調査のための十分な期間を確保することができなかった。そのため、現地協力者への謝金や旅費が予定していたよりも低くなったことによるものである。 最終年度は、現地協力者の協力のもと、2回程度現地調査を行う計画であり、そのための旅費と謝金として支出する。また、学会での発表のための経費として支出する。
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