研究課題/領域番号 |
19K12602
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
MCKAY EUAN 東京大学, 広報戦略本部, 特任助教 (50747540)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | LGBT / ジェンダー / キャンパス風土 / 学生支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、質的調査と量的調査を通して、大学に通うLGBT当事者の困難やニーズを明らかにし、LGBTを含む多様性に開かれた大学環境を実現するうえで有益な知見を提示することを目指すものである。 当初の研究計画通り、平成31年度は大学に通うLGBT当事者に対してインタビュー調査を行い、かれらが大学生活において抱える具体的な困難やニーズを質的に明らかにしてきた。 インタビュー調査は、「①LGBT大学生は大学生活の中でどのような困難を経験しているか?」「②LGBT大学生はリソースとして何を大学当局へ求めているか?」「③リソースについて知り、リソースへ繋がるために何が必要か?」の三つのリサーチ・クエスチョンのもとに実施された。SNSやLGBT関連のイベント、個人的なネットワークを通してLGBT当事者学生21名をリクルーティングし、大学における困難やニーズ等について個別の半構造化インタビューを実施した。得られたインタビューデータは、全て逐語化が終了しており、テキストデータとしてKJ法を援用し、カテゴリ分析を行っている途中である。 得られた結果としては、上記の三つのリサーチクエスチョンに厳密に答えられるような分析結果は今現在まとめきれてはいないが、①LGBT当事者の個人の困難の背景には組織の問題があること、②個人の対応には限界があり、それをカバーするのは組織レベルの対応であること、③組織による統一的対処の基盤の上に個人のニーズに合わせた柔軟な対応も必要になること、等がわかった。 現在、インタビュー調査結果をもとに、LGBTに対する大学のサポート体制や学生の主観的体験が学生の精神健康度や学業の動機づけにどのように影響するかについて仮説を生成し、Rankin(2004)をもとに仮説を量的に検証するためのアンケート調査を開発中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り、平成31年度に予定していたインタビュー調査を実施できており、21名分のデータ収集と逐語録が終了し、データの分析も途中まで終わっている状態である。データの分析は途中ではあるものの、その分析内容の一部を日本質的心理学会・日本性科学会にて発表をし、有益な意見交換ができている。 インタビュー結果の分析と並行してアンケートの内容の精緻化を進めており,令和2年度のアンケート調査の実施に向けて作業を進めている。なお,後述の通りインタビューに関しても継続して実施していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度も引き続きインタビュー協力者をリクルートし、インタビュー調査を進めていく予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けインタビュー実施が可能かどうかは未知数である。オンラインのインタビューという方法もあるが、プライバシー保持のため慎重に検討しなければならない。 計画通り、量的研究を進めるべく、アンケート調査の内容を精緻化し、調査会社に委託・実施していく予定である。ただし、コロナ禍で実際に大学への通学が始まっていない学生もいると考えられるため、アンケート調査の実施は早くても令和2年度の後半になると考えられる。 実際の調査実施に二の足を踏まざるをえない状況を考慮し、平成31年度に収集した質的データの分析とアンケート調査の精緻化を進めるとともに、研究の一部を学術誌に投稿できるような論文執筆も進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画で予定していたインタビュー協力者の数は50名であったが、実際に募集をかけて協力してくれたLGBT当事者学生の数は21名であった。リクルーティングにおいて見通しの甘さがあり、平成31年度のインタビュー協力者数は計画の数に至らなかったが、令和2年度もコロナ禍が落ち着く後半ごろに再度応募をかけ、インタビュー協力者数を増やす予定である。 また、平成31年度末に、研究結果に関して報告会と意見交換会を開催する予定であったが、コロナ禍で開催が難しくなり、その分の資金も令和2年度以降に繰り越しとなった。令和2年度、令和3年度と、年度末には報告会と意見交換会を実施する予定なので、その分の資金も必要となる。
|