研究課題/領域番号 |
19K12603
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
大橋 史恵 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 准教授 (10570971)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 香港 / 中国人家事労働者 / 外国人家事労働者 / 生活家電 / 洗濯機 / 月賦払い |
研究実績の概要 |
2022年度は21年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の蔓延による渡航制限の見通しを立てることができなかったため、現地調査は断念し、資料調査を中心に研究を行った。以前に現地で収集した1950年代から1970年代半ばまでの新聞記事や公文書、日本にいても手に入れることのできる資料を参照しながら研究を進めた。 経済理論学会の国際ジャーナルであるThe Japanese Political Economy誌に1960年代の香港における中国人家事労働者の雇用状況の推移を、日本製の生活家電(とりわけ洗濯機)とその購入のための月賦払いシステムの普及を関連づけて議論する研究論文を投稿し、掲載に至った。香港をフィールドとした移住家事労働者の研究は数多く存在するが、フィリピン等からの外国人家事労働者が出現する以前の状況についてはほとんど研究がない。戦後から輸出志向工業化を進めていく時期の香港で、中国人家事労働者の雇用のありかたがどのように変わったのかを実証的にとらえた本論文は、新しいファインディングスを提示している。本研究課題の成果の中心となるような論文であると考えている。 あわせて国際ジェンダー学会大会のシンポジウムで、香港の家事労働者の使用者について議論を行った。この成果をきっかけに、1970年代から80年代に使用者としての中間層がどのように拡大したのかを考えはじめることができた。この課題を追及するためにも研究期間を延長することの意義は大きいと考え、2023年度への予算の繰り越しをすることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査はできなかったが、資料調査を通じて十分な進捗を図ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
外国人家事労働者の導入が始まった1970年代から中国への「返還」がなされる1997年までの新聞記事等の資料分析によって、使用者団体による公共的実践と、植民地香港の境界管理がどのように進んだのかを考察したいと考えている。現在は、これまでに収集した資料を用いているが、もし今年度の香港渡航が実現すれば、現地の図書館等でさらなる資料収集を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は当初から香港でのフィールドワークとインタビュー調査の実施を中核的な課題として想定していたが、現地の政治関係の不安定化や新型コロナウイルス感染症の拡大によって現地調査を行うことができない時期が続いた。初年度に短期的な渡航を1回実施したのみで、2年目からは渡航制限が続いたために現地には足を運べていない。こうした事情から、本研究は早い段階から資料調査を中心とした研究に転換し、初年度に収集できた資料や現地協力者との連携によって日本にいても入手できる資料をもとに考察を進めた。しかし可能であれば、延長によって現地調査を達成したいと考え、繰り越しを申請した。また2022年度の研究を経て、1970年代から80年代にかけての家事労働者の使用者の状況についての新たな研究課題が浮上したため、その達成を図る上でも2023年度の研究継続が望ましいと考えた。
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