研究課題/領域番号 |
19K12607
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
菊地 利奈 滋賀大学, 経済学部, 教授 (00402701)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 女性詩 / ジェンダー / translation studies / 文学 / 近現代詩 / 翻訳 / Japanese poetry / アジア太平洋戦争 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究対象の女性詩人のひとりである永瀬清子(1906-1995)に着目し分析をすすめた。その成果のひとつとして、『詩と思想』(土曜美術出版・雑誌04219-03)の『永瀬清子特集号(2021年3月号)』に、論考「永瀬清子と戦争詩」を掲載。永瀬が戦中に発表した「夫妻」(『辻詩集』収録)や「花」(『新女性詩集』収録)を中心に戦争関連詩を分析したうえで、それらの戦中詩と1948年に発表された永瀬の詩「美しい国」とを比較し、永瀬の<戦後責任>と、戦後の読者や文学研究者の<戦後責任>について考察した。 その他、江間章子(1913-2005)や英美子(1892-1983)の戦中作品、及び、戦後の詩・散文・エッセイ・自伝などを通して、彼女らのおかれた戦中の状況や戦中の体験について資料を収集し、分析をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で、2020年度に計画していた海外出張がすべて中止され、共同研究(共訳作業)に支障がでた。オンライン化して参加しやすくなったセミナーや研究会もあり、他の研究者との議論の場が提供されつづけたことはありがたかったが、海外渡航の目処がたたず、国内外の学会が延期され、学会参加や発表申し込みの予定をたてることが困難にもなり、予定通りに研究がすすめられなかったことは否めない。国内での移動も容易でなくなり、資料収集や計画していたインタビューの実施などにも支障が生じた。 その他、新型コロナウイルス感染予防の観点から授業がオンライン化されるなど、学内業務にも変更事項が多く、研究時間が大幅に削られた。以上の理由から、2020年度の研究計画は変更を余儀なくされることも多く、全体としてやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、新型コロナウイルスの影響で予定していた国内外出張をすべて中止した関係上、計画していた戦争詩の英訳作業に遅れが生じたが、来年度以降は、英美子(1892-1983)、永瀬清子(1906-1995)、深尾須磨子(1888-1974)らの戦中詩の英訳をすすめる。 来年度も新型コロナウイルスの影響で国内外の移動が制限されることが予測されるが、これを機会に、すでに収集している戦中の資料の整理をすすめる。また、引き続き、『母の詩』(1941年)、『新女性詩集』(1942年)、『海の詩』(1943年)の3冊のアンソロジーを中心に戦中女性詩の分析をすすめ、特に戦後も詩作を続けた江間章子(1913-2005)や英美子については、詩人論を繰広げられるよう研究をすすめる。 戦中・戦後ともに活躍した女性詩人らについては、戦中詩作品の分析及び、戦後のエッセイや自伝を参照しながら、彼女たちを戦争協力に追い立てたものはなにか、また、戦後彼女たちが戦争協力詩を書いたことに対して弁明しなかったのはなぜか、女性詩人らの戦後責任についての考察を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、2020年夏及び2021年春に予定していた海外出張を取りやめざるをえなかったこと、また、新型コロナウイルス感染予防の観点から、2020年度に予定していた国内出張をすべて取りやめことが主な原因となり、2020年度の研究費使用額が激減したため。
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