研究課題/領域番号 |
19K12608
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
山崎 明子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (30571070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェンダー / 手芸 / 再生産 / 規範 / 手作り |
研究実績の概要 |
今年度は、基礎資料収集を中心に研究活動を行ってきた。特に本研究で掲げる4つのテーマのうち、近代の造花文化について文献を集めることができた。 近現代日本の手芸文化における造花の重要性は、それが家庭空間と学校教育空間で展開された教養的な活動であるだけでなく、海外に大量に輸出されていた点である。つまり、家庭的手芸と内職の関係性をみるために造花は重要となる。 しかし、文献資料調査で確認できるのは、造花は歴史として編纂されたものは限られており、産業データとしても統一されていないことである。「歴史」的に造花を見る場合には、古代寺院から続く仏花としての造花が中心となる。こうした仏花についても、現在まで寺院におさめる造花制作について、制作者の講演を聴くことが出来た。 対して、手芸的な造花は教則本は数多く存在し、現在まで出版が続いており、手芸教則本の中でも造花は早い段階で体系化されたことがわかってきた。手芸として女性に推奨されるだけでなく、科学教育の一環としても推奨されてきた。こうした手仕事と科学教育の両側面は、テクストとしてジェンダー化されており、メディアも男女別に設定される傾向があることが明らかになった。 今年度は造花を中心にしつつ、他の課題についても基礎資料収集を行うことができた。また、資料収集だけでなく各地で開催される手芸イベント等の見学調査を行ってきた。十分な分析は行えていないため、次年度以降、分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一年目であるため、多大な遅れはないものの、予定していた範囲の調査を行うことができなかった。 やや遅れている理由として、今年度後半に当初予定していなかった学務が集中的にあったため、その対応のために多くの時間を必要と死、十分な研究時間を確保することができなかったことが挙げられる。 また、本来であれば遠方の長期調査ができるはずの3月に、新型コロナウィルスの影響が見られ始め、調査先の美術館・博物館の閉館等により調査ができなくなったことも挙げることができる。 ただし、遅れてはいるものの研究は進めており、調査施設の問題、インタビュー等での対面リスク、学内業務の整理によって改善されるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は①資料調査および②展示見学調査、さらに③インタビュー等が必要と考えているが、②と③については次年度の積極的推進は困難と思われる。そのため、次年度は①について重点的に調査を行うこと、③についてはオンラインやメール等によるインタビューを検討することによりスムーズな調査が行える可能性がある。 ②については、海外の家庭手芸について展示調査および制作現場の調査を行う予定であるが、社会の状況を見つつ、可能な範囲で行うものとしたい。 本研究は物質的調査が必要な側面もあり、オンラインによってできることには限界がある。できるだけテクスト、デジタル資料を中心に基礎調査を行うことで、効率的に研究を進めたい。 今年度は研究補助のアルバイトが人材として見つけられず、作業に影響が大きかったため、今後アルバイト雇用により遅れを取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究補助が可能なアルバイトが不在だったことが原因である。そのため、次年度はアルバイトの雇用により研究推進を図る予定であり、状況は改善されるものと考えている。また、遅れている資料調査等については、可能な範囲で推進するに限定されると思われるが、移動・宿泊・入館等の制約がなければ、調査の遅れを取り戻し研究を推進したいと考えている。 具体的には、デジタル史資料の収集・整理のための環境を整備するとともに、条件が整えば海外調査等も進めていきたい。
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