研究課題/領域番号 |
19K12608
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
山崎 明子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30571070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジェンダー / 手芸 / 再生産 / 規範 / 手作り |
研究実績の概要 |
今年度は、第一に、手芸文化が他のメディアの中でいかに描かれ、消費されてきたのか、また第二に、現代社会においていかに展示され鑑賞されるのかを中心に研究を進めてきた。 第一の問題については、映画「キルトに綴る愛」、「YARN 人生を彩る糸」、「彼らが本気で編むときは」、そして「マルタのやさしい刺繍」を分析対象として、映像作品における手芸の表象を検討した。また、漫画作品でも多様な視点から手芸文化が取り上げられていることを確認し、それらの年代的な変化を検証してきた。70年代前後の少女漫画では愛情の表象であったり、内気な少女特有の性格の表現であったものが、2000年代以降少年やサラリーマンの手芸が取り上げられるなど、手芸をする主体の変化が見られるとともに、描かれる手芸文化そのものの変容も読み取ることができた。 第二の問題では、現代アートを中心にかつて芸術から排除されてきた手芸文化が表出するシーンが多くなり、現代社会の視覚文化において手芸はさらに多様なものとなっていることがわかる。特に女性アーティストの作品ではしばしば手芸文化が取り上げられ、イメージの固定化とその脱却が試みられていることが理解できた。一方で、固定的な手芸イメージを反復し消費するキュレーションも展開され、展覧会等でそれらを確認することができた。 今年度もコロナの影響により十分に調査研究を進めることが難しかったが、次年度以降まとめ上げていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響により、手芸関連の大規模イベントでの調査研究が困難になったため、十分に研究を進めることができなかった。特にいくつかの大規模イベントは、中止・延期だけでなく継続が困難になり終了してしまった事例も出ており、文化事業の困難もあったと思われる。また対面でのインタビューが難しく、高齢の手芸家の方々はオンライン対応も困難であるため、当初の計画から遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍によって当初の研究計画を変更しつつ、これまで研究を進めてきたが、あと一年のうちに本研究課題をまとめ上げていく予定である。インタビュー調査はまだ厳しい状況にあるため、極力文献調査で補いたい。またコロナ対応をしながら運営を続ける大規模手芸イベントの調査は引き続き行った育予定である。 年度内にこれまでの調査研究をまとめ成果を提出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査が十分に行えなかったこと、資料整理のアルバイトを十分に確保できなかったことが理由であるが、いずれもコロナの影響が大きい。
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