研究課題/領域番号 |
19K12609
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中西 三紀 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (60553146)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チリ農村女性 / チリ輸出農業 / チリ女性 / チリ農業の構造変化 |
研究実績の概要 |
2021年度は、筑波書房より出版された冬木勝仁・岩佐和幸・関根佳恵【編】『アグリビジネスと現代社会』(日本農業市場学会研究叢書)に「第9章 ワイン・ビジネスー南米チリの輸出農業とアグリビジネスー」(pp.151-166)を執筆した。 本科研の研究テーマの一つは輸出農業の拡大に伴うチリ農業の構造変化を明らかにすることである。上記論文は生鮮果実と並んでチリの輸出農業を牽引するワインに焦点を当てて、植民地時代からの概略史を皮切りに、チリワイン産業と輸出企業の特徴とチリ政府によるワイン産業育成政策を明らかにし、ワイン輸出農業が内包する問題点を指摘したものである。分析から明らかになったことは、チリにおけるワイン産業はグローバル化の進展と軌を一にして発展を遂げたものであり、輸出企業は極めて輸出志向が高いこと、そしてチリ政府もそうした輸出企業の意向を反映する形で政策を決定し、輸出推進の立場を堅持していること、しかしそのことは翻って生産の現場の労働者の労働条件や待遇改善には結びついていないこと、またこのことが、チリワインの評価が「安くて美味しい」に集約される背景であることを明らかにした。 本科研のいま一つのの研究テーマであるチリ女性、特に農村女性に関する研究は研究書、研究論文の精読によって進めた。経済的・社会的格差の大きいチリ社会においては女性間の格差も大きい。上層に属する女性たちはヨーロッパの女性たちと同程度の社会進出を達成し、同様の要求を求めていくが、農村を含む下層の女性たちの要求とは根本的に異なっている。しかし、一方では、女性にこそ強固な性別役割分担の意識が根強いことも明らかである。女性を対象とする研究の難しさが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画調書の「1 研究目的、研究方法など」に記した通り、本科研ではチリにおける生鮮果物輸出地域の農村女性へのインタビューに重きを置いているが、残念ながら、本科研が採択された2019年度から2021年度に至るまで、世界的な新型コロナウイルス感染の収束が見えず、チリでの調査を実施することができなかった。このこともあり、【現在までの進捗状況】の区分としては「(3)やや遅れている。」とせざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況や経口薬の普及度合い等に左右されることではあるが、第一には、チリでの調査の実現に向けてその可能性を探っていきたい。メール上でのやり取りの域を超えられないが、現地インフォーマントを紹介してくれる協力者とはコンタクトを絶やさないようにしているので、現地調査が実現すれば、ある程度の調査結果がまとめられると考えている。 ただし、2022年度も新型コロナウイルスの感染が落ち着かず、現地での調査が実現できないようであれば、これまで精読してきた文献・論文を整理する形で最終報告書を作成し、また論文の投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研ではチリでインタビューを行うために旅費を計上していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い渡航が制限され、計上していた旅費を支出することができず、次年度使用額が生じた。渡航が可能になり次第、渡航計画を立てる予定である。
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