研究課題/領域番号 |
19K12610
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
伊田 久美子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (20326242)
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研究分担者 |
山田 和代 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50324562)
中原 朝子 神戸大学, 男女共同参画推進室, 政策研究職員 (50624649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 世帯内分析 / 依存関係 / 権力関係 / 情緒関係 / 支え合い / ジェンダー / エイジェンシー |
研究実績の概要 |
初年度である今年度はまず今までの調査研究成果をまとめ、併せてエイジェンシー指標の構築に向けた準備作業を行った。 今までの研究のまとめとして、台湾大学で開催された東アジア日本研究者協議会学術大会EACJSにて研究報告を行った。この報告では貧困研究において近年注目されている支え合い関係としてのネットワークに着目したパネル報告によって、従来十分な関心が向けられてこなかった親同居未婚女性の生活に関わるネットワークについての分析を行った。第1報告(伊田)では、親同居未婚女性の世帯内における「支え合い」すなわち相互依存関係としての世帯内関係の実態と意識を男女、父母の違いに着目して分析した。第2報告(中原)では、親同居世帯で暮らすにおける若年層のネットワークに焦点を当てて、生活の中で生じる複数の事柄についての「、頼れる人」の有無等に関するが「いる」「いない」「そのことでは頼らない」という回答から、彼/彼女らがどのようなネットワークを形成しているのかを明らかにし、ネットワークのあり方と主観的幸福度の関連も踏まえても併せて分析・考察した。第3報告(山田)では若年女性の主観的幸福度が自尊感情、経済力、意思決定などとどのように関係しているのかを分析し、その結果を踏まえて、主観的幸福度は女性の自立やエイジェンシー(行為主体性)という観点からみた場合にどのような指標と評価できるのかを考察した。 このまとめにより、親同居若年女性は男性に比べて生活の質は悪く、経済的依存も大きいが、そうした依存、とりわけ父への依存の評価は否定的であり、家族内の支え合いではなく、独立可能な労働条件こそが生活の質を高めるという知見を得た。自尊感情やディストレスなどの、エイジェンシー(行為主体性)に関わる重要な変数の評価を一定程度進めることもでき、今後の新たな調査に向けた作業を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今までの研究成果をまとめ、新たな調査に向けてのエイジェンシーに関する項目の構築を一定程度進めることができたが、参照すべき先行研究調査が多く、検討作業に予定以上に時間がかかり、パイロット調査の実施を次年度に繰り延べる事になった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究成果を英語論文としてFeminist Economicsに投稿する予定である。 エイジェンシー調査項目を完成させ、年度内の調査実施を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の参加が日程及び本務との関係で困難な分担者が出て、急遽報告を行う学会を6月にグラスゴーで開催されたIAFFEへの3名参加ではなく台北で11月に開催されたEACJSへの2名参加に変更したため、予定より旅費がかからなかった。調査項目の確定について予想以上に参照すべき先行調査研究が多く、作業時間がかかったため、パイロット調査の実施を2020年度に変更した。 調査項目の確定を2020年度にできるだけ早く行い、年度内に本調査も含めて実施予定である。なお2020年度に参加を予定していた国際学会(IAFFE)はコロナ流行のため中止されたので、旅費の支出は2020年度も予定額に達しない可能性がある。
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