研究課題/領域番号 |
19K12613
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
姉歯 暁 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40259221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 農家女性 / 助け合い運動 / JA / 地域機能の持続性 / 高齢化 / 農村 / 介護 / ヘルパー養成事業 |
研究実績の概要 |
当初はJAのヘルパー有資格者のヘルパー業務そのものに焦点を当てようとしたが、調査の過程で、女性たちの間ではヘルパーとしての役割を未だに担っているものはむしろ少なく、それ以上に多様な地域機能の維持に関わりを持っているという現状が初めて明らかになった。 検出された具体的な事例は以下の通りである。①共同で起業を行うきっかけを作り出し、②行政及びJAとの媒介役として、また、③地域内福祉施設の作業の受け皿として、④自らも宅配弁当や訪問介護などに従事する、といった作業を単体としてではなく複合的に担当する事例である。今後、この調査結果をもとにヘルパーとして働く農家女性といった狭い視点ではなく、ヘルパー資格取得のためのJA内での声かけや実際の勉強などのプロセス自体が女性たちに新たな連帯意識を生じさせ、それが地域のリーダーとして地域機能維持の中軸となっていく」過程や、女性たちの多様な関わり方を支える要件を抽出する作業を行なっていきたい。 これまでの視察先は以下の通りである。①岩手県花巻市②JA全中③長野県佐久総合病院(地域医療と地域ボランティアとしての関わり方など)④JAしまね(歴代組合長等へのインタビューと管内の農福連携、「新規経済施設等の視察、高齢化に対応した地域農業への支援策、新規就農者とJAの支援策等)、JA 愛知東(女性リーダーによる助け合い組織、地域の遊休施設を利用した地域再生等の調査)、北海道の酪農を中心とする高齢女性たち(日本農業新聞「女の階段」愛読者の会)へのインタビュー等である。 これらの調査結果報告については、各紙面に記事として掲載し、それぞれ分析結果を付してすでに公開している。また、岩手県花巻市高松第三行政区では、10月ならびに2020年1月に講演を行なった。また、中国国立武漢大学の農村調査研究チームとともに2019年11月末に武漢近郊の農村調査を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本農業新聞社営農生活部の協力を得て、高齢化と孤立化が進む地域の中でも助け合い運動を始め、地域の持続性を担保する住民協力の態勢づくりを進める地域への視察と相互交流がスムーズに行われた。また、協同組合新聞社の協力も同時に得ることにより、JAー農家女性ー自治体間の協力関係の事例を集めることができた上に、紙上の企画とのコラボレーションによって取材先の紹介やインタビューの障壁を感じることなく調査を進めることができた。 当初より、現場に最も近いJA全中の担当責任者や新聞社の編集部と共に研究対象の現況について確認しながら研究の方向性を決めてきたため、研究対象の過去のデータではなく今日の変化に合わせてインタビューや視察を行うことができたこと、また、生きた情報を入手することができていることから、この点では、これまでのところでは、当初の研究計画をこなし、時間を無駄なく使うことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一月ごろから顕著になったコロナウイルスの影響で、直接対面してのインタビューや訪問視察ができなくなった。このことによって、今年度の予定は大幅に変更されることになる。高齢化した農家女性のほとんどがメールやネットを利用しない層であることから考えると、手紙や対面方式での聴取が必須であり、これまでもそのようにしてきたが、これを来年度に繰り下げなければならないであろう。また、海外における調査もヨーロッパの事情いかんで計画を大幅に変更する必要が出てくる。この先、当面は文献調査、並びに手紙での調査に注力していくことになろう。その上で、コロナウイルスがおさまれば、海外での調査を含め直ちに研究対象へのアプローチを再開するが、それまでの間は、これまで収集した資料やインタビュー内容の分析と途中経過をまとめた論文を作成することに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヘルパー資格を有する農家女性たちのうち、実際にヘルパーを続けているものが極めて少なく、女性たちに対するアンケート調査は聞き取り調査に変更されたため、アンケート処理に必要と思われたアルバイト代が当初予定より少なく済んだため。
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