研究課題/領域番号 |
19K12613
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
姉歯 暁 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40259221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スウェーデン / 高齢者福祉 / 給食 / ジェンダー平等 |
研究実績の概要 |
1、実証研究について:スウェーデンにおける在外研究期間と重なったこと、さらに日本ではコロナ収束への道筋が見えず、高齢者施設、農家女性に対するインタビューは現在も一切行うことができないため、スウェーデンにおける農家女性と福祉政策の関連性に焦点を当ててインタビュー、資料収集と解析、歴史の検証作業を行った。幸い、スウェーデンにおける農家女性に対するインタビューと介護施設の視察については、規制が緩和された以降、集中して作業を進めたため、遅れは出たものの3月までにそのほとんどを終えることができたため、現在分析を加えている最中である。 2、理論分析について:日本では介護に農家女性を労働力として利用することで新機軸を打ち出そうとしたものの、その有効性は「社会の役に立つという自覚を高める」「地域再生の原動力となる」といった効果はあったもののジェンダー平等には直接結びつかずに今日に至る。一方、高福祉国スウェーデンとデンマークの現状分析を通じて、農家女性のジェンダー平等を促進してきたものは起業促進策ではなく高齢者介護の完全な社会化および「家族から個人」への社会システムの転換であることが明らかになった。 日本のジェンダー平等政策は、女性の自立動機をサイドビジネスの中で獲得するという道筋を描くにとどまり、女性たちは介護と子育てに縛り付けられている主因を排除することなしに進められている。すなわち、福祉政策が家族介護を基本においていること、さらには「家族の中の女性たち」という軸を保持しながら進められているということを指す。北欧における「家族から個人へ」の動きが、日本の家族経営協定ひとつとってもその中に見られないことがその証左である。従って、農家女性の介護職への転用も限界をもち、さらに農村ジェンダーの解消にもつながることはなかったと考える。現在、こうした視座に立ち、分析作業を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スウェーデンではコロナ対策を「距離」ならびに高齢者の徹底的な隔離(外部からの遮断)に置いており、高齢者施設や高齢者に関わる給食施設などについてはウイルス付着を避けるために長期にわたって外部からの訪問ができなかった。さらに、農家女性の多くはオンラインでのインタビューができるほどのIT設備を持たず、スキルもないため、直接出向いてのインタビューを余儀なくされた。公共施設についても同様の扱いであり、一般の規制緩和より緩和スピードが遅かったため、すべてに日程が決定し、迅速にインタビューを行ったものの、帰国直前に集中したため、その解析までには至っていない。今期を使って検証を行うが、すでに理論と検証軸は定まっているため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究資料(インタビュー内容)を起こし、解析作業を行なっているので、それを進める。英語からの書き起こしのため、アルバイトを利用することはできないため、作業は時間を要するが、すでに残された作業は公的機関へのインタビュー分のみになっているため、夏休みまでには書き起こしを終了し、これまでの考察に影響を新たに加えるような事項が出た段階でさらに分析作業をくわえるつもりであるが、これまでのところ、分析軸が揺らぐような事実は出てきていないため、机上の分析作業を進めるつもりである。さらに、オンラインでの若手世代へのインタビューについてもSNSにて許可を得ており、世代間比較を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナで実証研究に必要な出張ができなかったこと、特に日本国内では一度も出張ができなかったことによるものである。今後、日本国内における出張がより緩和されるため、調査に出向きたいと考えている。さらに書籍購入ならびにデータ管理上必要なPC周辺機器の購入が必要である。したがって、これらの支出に充てたい。
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