研究実績の概要 |
最終年度は引き続き在外研究先のスウェーデンにおける調査研究と、日本国内でパンデミック初期に日本農業新聞の協力で実施されたアンケート調査の分析、並びにパンデミック中停止されていた農業者に対する対面での聞き取り調査と現地調査を行った。 1、スウェーデンにおける農家女性に対する調査:ジェンダー平等の視点からジェンダー平等度世界第5位(Exonomic Forum,ジェンダー平等指数)であるスウェーデンの農家女性に対する統計分析並びにインタビューを続行し、結果をまとめた。分析並びに調査項目は(1)「家庭内における平等」①性別役割分業、②家父長制的家族関係、③相続権、(2)地域との関わりや経営参画①高齢者介護の担い手、②経営実態、③地域の農業団体における発言度などである。その結果、高齢者介護の社会化やジェンダー平等への社会的取り組みが地域や団体における女性の発言度を高めて入るものの、経済構造の変化(EU、WTO加盟)による競争の激化は大規模・資本集約的な農業経営を増大させ、家族経営の表層と農業資本経営という構造を併せ持つ傾向が強まっていることや、そのことが高齢化による世代交代に先立ち農家女性たちを再び農作業の現場から家庭内へ引き戻していることが明らかになった。 2、JAのヘルパー制度利用者の多くは家族内介護にそのスキルを活かすにとどまっているが、資格取得過程で培われた人間関係や社会への関心の高まりが、地域の総合的な生活インフラの担い手として機能する力(NPOや介護センター等)として再編成されている事例も見て取れる。両ケースとも、家庭内、地域内におけるジェンダー平等には繋がっているとは言い難く、農家女性の地位向上には直接的にはつながらないこと、農業法人のように家庭外的労使関係の構築と社会的なジェンダー平等の進展と法整備(差別禁止法:スウェーデンの事例から)が必要であることが明らかになった。
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