研究課題/領域番号 |
19K12615
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
柳原 良江 東京電機大学, 理工学部, 助教 (30401615)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 代理出産 / 生殖技術 / 発展途上国 / 東アジア / 人種 |
研究実績の概要 |
前年に欧州で得た資料を元に、代理出産に関しグローバルなレベルで交わされるフェミニズム理論について整理し、International Association of Bioethics(国際生命倫理学会)より査読論文”Reconstructing Feminist Perspectives of Women’s Bodies Using a Globalized View: The Changing Surrogacy Market in Japan”を発表した。同論考は、東アジアにおける代理出産の文化的位置づけを念頭に、欧米で行われている代理出産に関するフェミニズム批評を分析し、それらの根底に存在する女性の人権の不可視化を指摘した。本論考は、フェミニズムのメインストリームである英米文化圏のフェミニズムが、キリスト教に根ざした議論のもと、代理出産に対し硬直化した視点しか持てず、それゆえ議論が停滞する現状を指摘した。本論考は生命倫理学に関する国際的なウェブサイト"Bioedge”に取り上げられ、それをきっかけに諸外国のメディアでも紹介された。(https://www.bioedge.org/bioethics/the-tide-turns-in-the-international-surrogacy-market/13515) また昨年度までの海外調査で培った人脈により、様々な国々で代理出産について議論する著者による論集『Towards the Abolition of Surrogate Motherhood』に招待された。論文提出後、出版社による査読の上、研究代表者の論考 "A ‘Handmaid’s Tale’ in East Asia: Pregnancy contracts pre-dating modern surrogacy”が受理された。同書は2021年10月にSpinifex社から刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ渦により本来予定していた海外調査や研究者招聘が不可能となった。さらに身内の不幸により、十分な研究時間を確保できなかった。 一方で、昨年度までに得られた情報をもとに、資料整理や論文執筆の作業を進めることにより、当初の予想を超えて論文執筆を進めることが可能となった。 私的な都合により令和2年度は十分な研究時間は取れなかったものの、コロナ禍が生じた当初に、大学の授業が1か月停止したことから、思いがけず研究に集中する時間を確保できた。この時期に、普段ならば数か月かかる研究作業を短期間で進めることができた。結果的に全体で見れば、予定とは異なるものの、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は研究に十分な時間を取れなかった事情があり、一部の研究作業を凍結状態にすることを余儀なくされた。それゆえ本研究は、来年度まで延長する予定でいる。またコロナ渦が予想以上に長引いたことから、今年度までに予定していた海外調査や海外の研究者を招いたシンポジウム実施は困難であるため、予定を変更し、招聘を計画していた研究者らの執筆した洋書の翻訳書を制作、出版することにした。さらにこれまでに得られた業績や調査結果を用いて、単著を発表する予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に身内が末期がんと診断され2020年度内に死亡した。この出来事により心身ともに影響を受け、研究活動の遂行が困難となり、最小限の活動しか実施できなかった。またコロナ禍により、当初予定していた海外調査が不可能となり、大幅な繰り越し金が生じた。 生じた次年度使用額は当初、最終年度である令和3年度に予定していた国際シンポジウムにパネリストを増やす形で充当するつもりであったが、現状では、コロナ禍により国際イベントの実施も困難である。オンライン掲載も検討したが、予定していたパネリストが居住するフランス、米国西海岸と日本の時差を考慮すると、全てのパネリストが日本時間の昼間に参加する形のイベントは不可能と判断せざるを得なかった。 それゆえ国際イベント開催は諦めて、招待予定だった研究者らが執筆した本の、日本語版制作を進めている。さらに日本国内で実施できる文献調査を進めた上で、本研究費による成果も含めた、単著を発表する予定でいる。
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