研究課題/領域番号 |
19K12616
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
田中 洋美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (70611739)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェンダー / セクシュアリティ / メディア / SNS / 規範 / 身体 / 表象 / 言説 |
研究実績の概要 |
本研究はソーシャルメディアの利用の広がりがいかなる社会変動をもたらしているのかについて、ジェンダー規範に焦点を当てて検討するものである。今年度は、文献調査を続けるとともにソーシャルメディアを媒体とする世論形成及びソーシャルメディアの個人利用について資料・データを収集・分析した。また新型コロナ感染症により滞っていた対面でのデータ収集については、オンライン調査に切り替えて実施した。調査の結果、ソーシャルメディアが社会的に周縁化されている女性やマイノリティのエンパワーメントに資する部分とそうでない部分の両方を持つことがわかった。エンパワメントについては、従来メディア発信の担い手になりにくかった女性やマイノリティの情報発信や交流・コミュニティ形成が可能となったこと、オンライン上での交流・コミュニティ形成、ジェンダー平等のための新たな世論形成が可能となったことがあげられる。他方でオンラインミソジニーやサイバーストーキングなどSNSを媒体とする人権侵害や暴力の問題が発生しており、デジタルなメディア空間が必ずしも安全なものとはなっていないことも明らかとなった。またSNSを媒体に形成される私的な公共圏においては、伝統的な女性性や異性愛規範への抵抗が見られるが、同時に従来の性規範を再強化する動きがあることもわかった。特にセルフィー・自撮りに関する実践を取り上げ、多くの女性が行う自己呈示・自己表象の実践の実態に迫ったが、女性ユーザーに特徴的な問題として、外見美を求める身体規範の強固さ、自画撮り被害など性的被害・リスクの問題を特定した。これらの調査の結果は、学会等で口頭発表するとともに、論文等にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の拡大により対面でのデータ収集、研究出張ができなくなった。一部オンラインで実施可能なものについては変更したが、研究成果の発表については、国内学会では行ったものの、当初予定していた国際学会での成果発表等、海外での活動は持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の拡大の影響により、2021年度も対面でのデータ収集や学会発表、海外への渡航は実施の見通しが立っていない。そのためオンラインに切り替え可能なものについてはそうしていく。海外での情報発信についても同様である。世情を見つつ成果発表の機会を作っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の理由は、新型コロナウィルス感染症の拡大が収まらない状況が続いたことによる。当初予定していた対面でのデータ収集に加え、国内外での学会参加・調査に関わる出張も引き続き見送らざるを得な区なった。今後もオンラインでの調査・研究活動を行うとともに、世情を見つつ、実現可能な形で国内外で成果発表を行う計画である。海外での活動についても、渡航が可能になれば実施を検討する。
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