当初2020年度、2021年度、2022年度に実施を予定していたオーラルヒストリーおよびアーカイブ調査について、コロナ禍のため実施できないでいた。これらについて、今夏渡英して実施した。1970年代から1980年代にかけて要求者組合で活動していた方、および1970年代を通じて、女性解放運動やフェミニスト雑誌編集の中心にいた方、また1980年代以降に南アジア系女性の運動に関わっていた方に貴重なお話を伺った。 また当時の労働者階級の要求者組合と中産階級の女性解放運動との間で、1)cohabitation ruleの何を問題としていたかについて、相違があったかどうか、また2)労働概念に相違があるかどうか、3)倫理的生産などへの視角があったか、といった点を念頭に置きつつ、アーカイブワークを行った。 研究期間全体を通じた成果としては、オーラルヒストリー調査とアーカイブワークを、経済思想についての理論的研究と結びつけることにより、1970年代の労働者階級の女性解放運動の主張を「草の根のフェミニスト経済思想」として再構成し得たことである。これによって、本研究を申請した時点での目的を達成できた。この成果について、第一に、イギリス女性解放運動の出発点の一つとされている第一回全英女性解放大会(Oxford Weekend)開催のきっかけとなった、History Workshop運動によって生み出された歴史学雑誌History Workshop Journalの主催するHistory Workshop OnlineのGlobal Feminisms 特集に招聘され寄稿することができた。また第二に、経済学の脱植民地化と多様化を求める学問運動の一環として開催された、経済思想史の脱植民地化と多様化を求める第一回の国際会議にて、研究報告の機会を与えられ、その会議に基づいた専門学術雑誌の特集号に招待され寄稿することができた。
|