本研究は、公文書の調査を中心に、明治期の英語圏(ハワイ、オーストラリア、アラスカ、北米)における日本人売買春の特徴を検討した。これらの地域では、労働集約型の第一次産業(農業・漁業・鉱物採掘など)が発展し、大規模な男性労働人口が存在し、売買春への需要が高く、ほとんどの法律が売春を禁じていたにも関わらず、地元社会で売春は社会秩序を守る必要悪として認識され、地元官憲は売春を許容し、現実的には保護していた。20世紀初頭に入ると、北米やオーストラリアで公の売春は衰退したが、ハワイでは兵士の性的受容を満たすために保護政策がとられ、第二次大戦以前期を通じて日本人を含む売買春が保護され継続した。
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