研究課題/領域番号 |
19K12625
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研究機関 | 福岡女子短期大学 |
研究代表者 |
加藤 朋江 福岡女子短期大学, その他部局等, 准教授 (90296369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 早期自然流産 / 自然流産 / あいまいな喪失 / 子ども観 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊娠週数12週未満の早期の自然流産について、現代日本の女性たちがそれをどのように経験したか、意識や行動のレベルにおいて明らかにし、当事者の方たちにどのような情報提供やサポートが必要であるかを考察することにある。 交付申請書における研究実施計画において本研究は(1)日本における早期自然流産の歴史社会学的研究、(2)早期自然流産の当事者に対する聞き取り調査、(3)インターネット上の書き込み等テキストデータの分析、の3つの作業によって実施することになっていた。だが、2020年2月以降の新型コロナウィルス感染症の感染拡大とその防止のための社会における様々な行動の制限によって、2020年度における研究は計画通りに進めることが難しい状況となった。 そのため、研究の成果は2019年度の知見を(1)の視点による文献・各種の資料による確認によって改めて確認したものとなる。すなわち、①医療テクノロジーの進展により、妊娠が確認された(あるいは受精卵がつくられた)段階で、胎芽や胚が「子ども」として認識されていること、②それゆえに、早期自然流産の経験が当事者たちにおいては「我が子の喪失」として受け止められる場合があること、③そうした経験が、「身体的には不在であるが心理的に存在」するがゆえに「あいまいな喪失」な状態を生み出すこと、よってその悲哀の感情が長く続く可能性があることを追認した。 妊娠の高年齢化に伴い、今後早期自然流産を経験する女性の割合は今後ますます高まると思われる。そのような現状において、当事者に対する「あいまいな喪失」であるがゆえの特別な心理的サポートを考える上で本研究の意義は大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述したことと重複するが、2020年度においては、新型コロナウィルス感染症の流行とそれに伴って、社会的な行動制限を余儀なくされたために、研究の計画を大幅に変更せざるを得なくなった。とりわけ、当該年度においては昨年度の実施状況報告書に記載した「医療従事者に対する聞き取り調査」を実施する予定であったが、コロナ禍において医療従事者を新規に情報提供者として確保することが難しく、新しい情報が全く得られない状況である。加えて、こちらも昨年度の実施状況報告書にある「一般向け、及び専門家向けの雑誌記事の検索・蒐集」であるが、移動の制限や各種図書館の休館、利用制限などがあり、はかばかしい成果が得られなかった。 他方、分析手法の1つとして考えているテキストマイニングの方法については、いくつかの文献を収集しその方法を研究したり、オンラインで開催されている研究会に参加するなどして、今後データを入手した後にすぐに分析が可能なように準備を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本邦における新型コロナウィルス感染症の感染拡大が未だに収束の気配を見せないことから、2021年度においても対面での聞き取り調査や図書館等に赴いての文献収集は難しいものと思われる。そのため、インターネットや各種のデータベースを活用した研究にシフトすることを今後の推進方策としたい。具体的には以下の2つを考えている。 (1)新聞記事データによる「早期自然流産」イメージの変遷を調べる。こちらは、大手の全国紙が提供するデータベースによって戦後からの自然流産についての記事を検索し、内容分析の手法を用いてその変遷を追う。そのことによって、一般的に流通している「自然流産」イメージの変容を明らかにし、どのようなことが女性たちに伝えられているか、確認していく。 (2)一般向けの雑誌における「早期自然流産」記事の検索を実施する。こちらも大宅文庫のデータベースを活用することで、一般向け雑誌に書かれている「自然流産」の記事から、何が伝えられてきたのかを明らかにする。 これらの内容については、研究発表や論文執筆の形式によって広く社会に向けて情報を公開していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症のため、研究会や学会参加のための出張がすべてキャンセルになり、その分の出張旅費を使用できなかった。また、聞き取り調査が出来なかったために、テキスト起こし等の謝金、情報提供者への謝礼(図書カード)等の人件費・謝金も使う機会がなかった。2021年度以降においては、ICTの活用や情報機器の購入費用、データベース構築のための人件費等に充てることとしたい。
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