研究実績の概要 |
本研究の目的は、Ce:(Lu,Y)2SiO5 (LYSO)、 Ce:Gd3(Ga,Al)5O12 (GAGG)、Ce:Lu3Al5O12 (LuAG)、Ce:LaBr3といった、バンド構造や各種欠陥の発生要因が異なるシンチレータに対し、4~6族陽イオンを共添加することで、各シンチレータに対する特性改善メカニズムを解明することにある。さらに、添加元素、添加量の最適化を各シンチレータに対し実施し、発光量、エネルギー分解能、蛍光寿命、放射線応答の線径性といったシンチレータ特性の最大化も狙う。 2019年度には、まず各シンチレータに対する共添加元素の添加量の最適化を行うべく、 Ce:LYSO、Ce:GAGG、Ce:LuAGのホスト結晶に対し、Zr, Hf, V, Nb, Ta, Mo, Wの7種の共添加イオンを200, 500, 1000, 3000ppm添加した結晶をMicro-pulling-down(m-PD)法により育成した。得られた結晶に対し、加工研磨ののち光学、発光量、蛍光寿命を評価し、共添加イオンとシンチレータ特性変動との関連性を現象論的に明確化した。Ce:LaBr3ホスト結晶の場合、m-PD法ではなく、Vertical Bridgeman(VB)装置を用いて育成を行った。1回に1つの結晶育成ではなく、共添加されていないCe:LaBr3と共添加元素の添加量変えた多数の結晶を同時に育成するためのホットゾーンと治具を検討し、作製された治具を用いた育成テストに成功した。 また、1インチCz法を用いた結晶育成条件とホットゾーンの検討を行い、LYSO、GAGG、LuAGのホスト結晶の成長条件を早期に確保することができた。これを基に次年度の共添加した1インチ結晶育成と検討がよりスムーズに行われることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
m-PD法を用いた最適組成探索のための結晶成長は順調に行われた。Ce:LYSO、Ce:GAGG、Ce:LuAGのホスト結晶に対し、Zr, Hf, V, Nb, Ta, Mo, Wの7種の共添加イオンを200, 500, 1000, 3000ppm添加した結晶をm-PD法により育成した。成長した結晶に対し、光学研磨を行った後、結晶組成、結晶相の分析を実施し、光学、発光、シンチレータ特性評価を順次行った。これにより、各シンチレータホスト結晶におけるZr, Hf, V, Nb, Ta, Mo, W共添加のシンチレータ特性に与える影響を計画通りに探索することができた。さらに、1インチCz法を用いた結晶育成条件とホットゾーンの検討を行い、LYSO、GAGG、LuAGのホスト結晶の成長条件を早期に確保することができた。これを基に、2020年度の研究が加速化可能と考えられ、計画よりも順調に研究が進捗している。
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