研究課題/領域番号 |
19K12626
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 敬鎭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 学術研究員 (10521768)
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研究分担者 |
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シンチレータ / 結晶成長 / Ce添加 / 共添加 / GAGG / LYSO / LuAG / LaBr3 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Ce:(Lu,Y)2SiO5(Ce:LYSO)、Ce:Gd3(Ga,Al)5O12(Ce:GAGG)、Ce:Lu3Al5O12(Ce:LuAG)、Ce:LaBr3といった様々なシンチレータに対し、4~6族陽イオンを共添加することで、各シンチレータに対する特性改善メカニズムを解明することである。さらに、添加元素、添加量の最適化を各シンチレータに対し実施し、発光量、エネルギー分解能、蛍光寿命、放射線応答の線形性といったシンチレータ特性の最大化も狙う。 昨年度は、第1ステップとして各シンチレータに対し、4~6族陽イオン元素を共添加した結晶を、μ-PD法により作製した。μ-PD法は小型の結晶を高速に作製することに特化した育成手法であり、元素の添加効果や添加量の最適化を迅速に行う事ができる。この特徴を活かして、μ-PD法によるMoイオンを中心とした最適共添加元素の探索と特性改善を行った。 今年度は、第2ステップとしてμ-PD法による組成探索の結果判明した共添加元素、添加量のシンチレータに対し、1インチサイズでのチョクラルスキー(Cz)法での結晶作製を行った。作製した結晶のシンチレータ特性について、発光量、エネルギー分解能、蛍光寿命、放射線応答の線形性を評価した。Ce:LaBr3ホスト結晶の場合、μ-PD法ではなく、Vertical Bridgeman(VB)装置を用いて育成を行った。1インチサイズの結晶成長のための育成条件とホットゾーンの検討を行うとともに、育成用石英アンプルの設計と製作も行った。これらを利用して、1インチLaBr3単結晶の成長に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
μ-PD法による組成探索の結果、シンチレータ特性改善が判明した共添加元素、添加量を含め結晶組成に対し、1インチサイズでのチョクラルスキー(Cz)法により結晶作製を行い、前年度と同様に作製結晶のシンチレータ特性を評価することで、発光量、蛍光寿命に加え、エネルギー分解能、放射線応答の線形性を確定した。厳密なエネルギー分解能、放射線応答の線径性評価には、サンプル中のCeおよび共添加イオン濃度が十分に均一であり、結晶性が良い結晶が必須である。高速育成、高速スキャンのμ-PD法と、高品質、大型、組成均一性に優れるCz法の優位点を活かした材料研究を展開している。また、Ce:LaBr3ホスト結晶も、VB法による最適組成探索と並行し、1インチサイズでの結晶作製も順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には第3ステップとして、国際共同研究者のNikl教授との連携のもと、シンチレータ特性の変動が顕著であることが確認できた各種共添加単結晶について、共添加無しの結晶も併せて、単結晶構造解析、熱ルミネッセンス測定、XANES測定、EPR測定、発光波長・強度および蛍光寿命の温度特性を総合的に評価することで、結晶構造内の欠陥の有無やバンドギャップ内の欠陥由来のエネルギー準位の存在とCe3+ 4f-5d発光との相互作用といった現象を確認し、共添加によるシンチレータ特性改善メカニズムを明らかにする。 μ-PD法による最適組成探索と並行し、現状で良好な結果が得られているMo, W共添加イオンについて、1インチサイズでのCz法により各共添加イオンとCe仕込み濃度における結晶作製を行い、共添加元素偏析係数の評価と最適共添加仕込み量を決定する。μ-PD法での検討結果に従い、他の共添加元素についても、順次Cz法による結晶作製と評価のフィードバックを進める。また、Ce:LaBr3ホスト結晶もVB法による最適組成探索と並行し、1インチサイズでの結晶作製を行い、Ce添加と共添加した作製結晶のシンチレータ特性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
坩堝とアフターヒーターの原材料であるIr金属の価格が急騰し、昨年度はμ-PD用坩堝の改修のみを進めた。一部の予算を次年度に繰り越して、現在実験の進行に伴って消耗される坩堝またはアフターヒーターの改修に対応できるように次年度使用を決めた。また、チョクラルスキー(Cz)法での結晶作製のための断熱材などの購入にも適用することができると考えられる。
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