研究課題/領域番号 |
19K12627
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 達 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (50554705)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キャリアダイナミクス / X線吸収分光 / X線光電子分光 / 時間分解 / 飛行時間型電子分析器 |
研究実績の概要 |
光触媒や太陽電池などの光エネルギー変換材料の高効率化には、光励起キャリアのダイナミクスを理解することが不可欠である。光照射により生成する光励起キャリア(電子・ホール)は占有状態と非占有状態の間を移動する。従って、光励起キャリアダイナミクスを包括的に理解するためには、占有・非占有状態の両者を観測することが不可欠であるが、これまでそのような実験的取り組みは存在しない。 そこで本研究は飛行時間(TOF)型電子分析器を使用したピコ秒時間分解X線吸収・光電子分光(XPS/XAS)システムを開発し、占有・非占有状態両方の時間変化を追跡し、光エネルギー変換材料における光励起キャリアダイナミクスの全貌を解明することを目的とする。また、TOF型電子分析器では全運動エネルギーの電子が検出器に到達し、そのエネルギー分解が可能という特長がある。この特長を活かし異なる検出深さのXASスペクトルを一度に測定することを目指した。 令和2年度は、令和元年度に開発したTOF型電子分析器を用いたXAS測定システムを用いて深さ分解XASスペクトルの測定を行った。開発したXAS測定プログラムでは、SPring-8 BL07LSUの時間分解X線光電子分光ステーションのTOF型電子分析器(VG Scienta, ARTOF 10k)とビームラインの軟X線アンジュレータ及び分光器が連動して、XASスペクトルを計測することが可能になっている。深さ方向に化学状態の分布がある実験試料として、TiO2表面に氷H2O薄膜を成長させた試料のO K-edge XASスペクトルを測定した。バルク敏感な全電子収量法XASスペクトルと表面敏感なAuger電子収量法XASスペクトルに差が小さかったため、氷薄膜の膜厚を更に厚くし最適化する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに計画していたTOF型電子分析器を用いたXAS測定システムの開発に成功し、そのシステムを用いて深さ分解XASスペクトルの測定を行った。深さ方向に化学状態の分布がある実験試料として、液体窒素温度に冷却したTiO2表面に水蒸気を曝露し氷H2O薄膜を成長させたH2O/TiO2試料を準備し、O K-edge XASスペクトルを測定した。バルク敏感(TiO2基板に敏感)な全電子収量XASスペクトルと表面敏感(氷H2O薄膜に敏感)なAuger電子収量XASスペクトルに差が小さかったため、氷薄膜の膜厚を更に厚くし最適化する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
実験試料であるH2O/TiO2における氷H2O薄膜の膜厚の最適化を行い、開発したTOF型電子分析器を用いたXAS測定システムにより異なる検出深さを持つXASスペクトルが一度に測定可能であることを実証する。また、超短パルスレーザーを用いたポンプ・プローブ法による時間分解XAS計測の開発を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で海外・国内学会参加のための旅費が不要になったことが要因の1つとして挙げられる。来年度以降に本研究課題遂行のために必要な実験試料及びレーザー光学部品購入のため使用予定である。
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