研究課題/領域番号 |
19K12628
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
田中 宏志 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (10284019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スパースモデリング / 核密度分布 / 中性子線回折 |
研究実績の概要 |
中性子線回折データをスパースモデリングにより解析することで詳細な核密度分布を求めるプログラムを作成し、これを典型的な強誘電体の1つであるKDPの常誘電相に適用し、本課題で開発する手法の有効性を確かめた。 KDPは常誘電相で水素原子が安定に存在するサイトが2つ存在するが、温度を下げていくと酸素原子が1つのサイトに局在するために対称性が低下して強誘電体に相転移することが様々な実験から知られている。しかしながら、中性子線回折データを最大エントロピー法(MEM)などの従来法で解析して得られる核密度分布からは、常誘電相で水素原子が2つのサイトに分かれて存在することは明確には確認できなかった。 本研究で開発したスパースモデリングを用いた解析法で同じ回折データを解析したところ、水素原子が2つの安定な場所に存在することをはっきり確かめることができた。このことは核密度分布の解析において、スパースモデリングはMEMよりも詳細な情報を同じデータ回折から引き出せることを示しており、MEMよりも優れていることを示している。この成果をJ. Phys. Soc. Jpnに投稿し、注目論文に選ばれた。 スパースモデリングではスパース性を決めるパラメータの選び方に任意性がある。しかしながら、解析から得られる核密度分布の重要な部分はパラメータの選び方によらず同じ傾向を示した。この任意に選べるパラメータについても決定する指針を与えた。これらのことから本研究で開発する手法の有効性が確かめられたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の予定通り進行しており、成果も出ている。
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今後の研究の推進方策 |
スパースモデリングによる解析手法はKDPにしか適用していないが、今後様々な系に適用し有効性を確認する。そのためにプログラムの汎用化を行う。具体的には、粉末の回折データなどで反射が重なった場合に解析を行うG-typeと呼ばれる解析デクニックがあるが、現在のプログラムはこれを導入していない。そこでG-typeを用いた解析を導入する。また、現在は適用する回折データごとに、いくつかのパラメータを調整する必要があるが、プログラム内で自動調整できるようにして汎用化を行う。これらのことを通して、多くの系で解析ができるようにし手法の有効性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学院生2名の学会発表旅費として使用する予定であったが、コロナウイルスのため現地開催が中止されたため、次年度使用額が生じた。今年度の学会発表旅費として使用する予定である。
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